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第95話
仕事が終わってユキを迎えに行く。ついでに匠の様子を見ようとトラに部屋に案内してもらった。
「ここよ」
「ありがとな」
ノックしてから中に入ると起きて机でトランプをして騒いでいる3人。3人は俺を見た瞬間トランプをやめ立ち上がり俺に頭を下げた。その勢いがすごくてユキが怯えて俺の後ろに隠れる。
「ありがとうございました!」
「いや…、お前ら怪我は大丈夫なのか?」
「大丈夫です!もう走り回れますよ!」
そう言ってニコリと笑った匠の頭には包帯がぐるぐると巻かれていて痛々しいけれど。
「匠くん…怪我、痛い…?」
「痛くないよ!」
「元気…?」
「元気元気!」
ユキは俺の後ろから出てきて匠のそばに寄り頭の包帯を優しく撫でる。ユキが泣きそうな顔をしていて、優しいやつだなぁ。と改めて思う。
「匠くん、ばいばい、」
「バイバイ!またね!」
俺のところに戻ってきて、俺も匠に手を軽く振ってから部屋を出た。
「匠くん、大丈夫…?すぐ治る…?」
「治る治る。それよりユキ、明後日から旅行だ」
「りょこう?」
旅行つってもユキにとってはつまらないものだと思うけれど。
家に着くとしつこく旅行って何?と不安そうに聞いてくるユキに旅行の意味を説明した。途端不安そうだった顔がキラキラした笑顔に変わる。
「お泊まり…!命と一緒…!」
「ああ。でも俺は仕事で行くから、ユキはホテルの部屋で留守番していてほしいんだ」
「うん。僕、できる…」
「じゃあ明日買い物行って準備しような」
「うん!」
俺に抱きついて嬉しそうにするユキの頭をくしゃくしゃ撫でた。
「二人でいくの…?」
「…違う」
「違うの…?」
「赤石と偉い人と、あと二人いる。」
「赤石、さん……」
頬を膨らませ、また、赤石さん…と怒り出したユキ。怒るなよと膨らんだ頬を撫でるけどその頬が萎むことはなかった。
「赤石のこと、そんなに嫌いか?」
「赤石さん、命とずっと一緒…」
「ユキの方が一緒にいるじゃねえか」
「違うぅぅ…!命がいい…!」
よくわからない。ユキを抱き上げて背中をポンポン撫でながら晩御飯は何にするかを考えていた。
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