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第96話

結局うどんを食べて二人で風呂に入る。アヒルのおもちゃを忘れずにユキは湯船に浮かせて笑っていた。 「ユキ、洗え」 「うん。アヒルさん、待っててね」 俺と交代に髪や体を洗って、俺は湯船に入った。ぷかぷか浮くアヒルは正直邪魔だけどそれを退かすことはユキに申し訳なくてできないからそのまま。でも動いてほしくなくて両手でアヒルを下から覆うように押さえた。 「…命、アヒルさん、好き?」 「え、まあ…うん」 ユキは俺がこうやって押さえているのはアヒルが好きだからと勘違いしたようで。邪魔とか言えないし。 「僕と、アヒルさん…どっち好き」 「はぁ?」 また頬を膨らませ俺を睨んでいるつもりだろうが…風呂に入ってるから少しだけ顔が赤く、潤んでるようにも見えて今のユキは俺にとっちゃ毒でしかない。 「ユキ」 「本当…?僕、好き?」 「好きだ」 体を泡で包んでふんわり笑うユキがあまりにも可愛くてアヒルから手を離しユキの濡れた髪を触る。 「僕、髪の毛、変?」 「変じゃない」 「命、よく髪の毛、触る」 「お前が好きだからな」 ああこれは、厄介な病に掛かってしまった。 風呂から上がって髪を乾かし、ユキにオレンジジュースをいれてやる。ゴクゴクと飲んで空になったコップを洗おうと椅子を持ってこようとしていて…ちゃんとした台を買ってやるか。と明日の買い物リストにいれる。 「ユキ、俺が洗うから置いとけ」 「僕、する…!」 「なら椅子は俺が持ってくるよ」 成長の邪魔はしちゃいけねえよな。黙って椅子を運んでコップを洗うユキを眺めていた。 「僕、ねむねむ…」 「歯磨いてベッド行け」 「歯磨き…」 一緒に行く、と俺の手を引いて洗面所に行き並んで歯磨きをする。んーと眠そうに目を擦るユキは、うがいをする水を飲み込みそうになって焦って吐き出していて笑ってしまった。 「…笑わないでっ」 「悪い悪い」 歯磨きも終えてベッドに入る、洗濯機やら片付けやらのために俺はまだ眠れない。 「ん…ん…!」 唇をつき出しキスをしろとアピールするユキに応えて唇を落とすとへにゃっとだらしなく笑う。そのまま俺に擦り寄ってきて好きだと言われ愛しくてたまらなくなる。 「寝ろ」 「うん…おやすみなさい…」 しばらくすると聞こえてきた寝息。そっとベッドを抜け出して洗濯機を回した。

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