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第103話
目的地にしていたホテルに着くと若を迎える若の友人達。彼らも組の若頭でたまに会っては遊んだり仕事をしたりしているらしい。そういえば俺去年来たわ。その顔ぶれを見て思い出す。早河の言ってた通りだと自分の記憶力のなさを認識した。
「命、命…」
「ん?なんだ」
「おしっこ…漏れちゃうっ」
「え…っちょ、もうちょっと我慢しろ!」
ユキを抱き上げ赤石に先に中にいると伝えてトイレに走り込んだ。
「ほら、」
「見ちゃ、メ…」
「わかったよ」
手を洗う洗面のところでまっているとスッキリしたような顔で帰ってきて手を洗い俺に抱きつく。
「…眠たいの」
「寝てても良いぞ」
「うん…」
ユキを抱き上げると胸に顔をすり付けてきてだんだん力を抜いていって重たくなってきた。本当に眠たいようだ。
ユキを抱っこしたまま皆のところへ戻ると、とりあえず部屋に荷物を置きにいこうということになっていて、ユキを抱えているからと赤石が俺の分の荷物まで運んでくれるらしい。
ユキはやっぱり親父に見てもらっていた方がよかったのか、とか思ってなんだか胸がモヤモヤしている。
それを察したらしい赤石が「大丈夫だよー」と言い俺の肩をポンと叩いて前を歩いていく。
なんだか少し落ち着いた。普段は赤石がすることに対してそんなことを思ったりしないけれど、今は少しだけ、そう思った。
眠ってるユキをホテルの部屋のベッドに寝かせる。そんなユキの頬を同室の赤石がツンツンとつついてユキは眉間にシワを寄せていた。ユキには全く似合わない顔。
「どうする?ユキくん寝てるならみっちゃんここにいる?」
「……けど」
「いいよ、この出張は遊びが9割だから。若本人が言ってたし、俺が伝えとくよ?」
「ありがとな」
申し訳ない気持ちが胸の中でずっとモヤモヤしてるけれどユキと二人になれることが今は嬉しい。
「じゃあ俺、行ってくるから!」
「ああ、頼む」
ユキの眠るベッドの縁に座ってすることも無いからボーッとするだけ。暇だなあと言ってもユキと二人でいれていることが俺を少し安心させる。
「んぅ…」とユキが寝返りをうつ。そのせいで顔が見えていたのに背中しか見えなくなった。そしてユキの手がシーツを何度も何度も撫でていて俺を探しているのか?と口許が緩む。
「俺はお前のことすげえ好きなんだけどな」
どうしようもない気持ちが自分の心の中でつっかえる、そこで留まってる。それが苦しくて、でもその苦しみさえ愛しく思えて。
「…頭、おかしくなっちまったのかな……」
苦笑を零れた。
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