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第105話
後頭部を押さえられるように手が回され、舌をも絡ませた。
唇が離れて数秒間、至近距離なのに見つめ合うこともしない。口端を緩く上げている赤石。ユキを拾ってから弱くなった気がする。それは身体的にも精神的にも。
また赤石が近づいてくる、キスをされる、流される。流されてしまう。
腕をあげて赤石の頬に指を滑らせる。そして───······
───手を拳に変えてそのまま頬を殴った。
「いってええっ!!」
「…悪い。流されたらいけないと思って。」
「流されろよ!今良い雰囲気だったじゃん!!」
「俺、お前に抱かれるとか嫌だ。」
雰囲気をぶっ壊して赤石の赤く少し腫れている頬に掌を置いた。
「…悪い。本当に、悪かった」
「…いいけどさぁ。そのらしく顔どうにかしなよ。」
「なんだよそれ」
「ああもう、さっき俺、若がいるからユキくんは寂しくないだろうとか言ったけど、そんなこと絶対無いから。ユキくんだよ?あんなみっちゃんが大好きな子が寂しくないなんて思わないわけないじゃん。」
ムスッとしながらそう言って頬を俺の手の上から押さえる。
「みっちゃんの手、冷たくて気持ちいい。許してあげるからもうちょっと冷やして」
少しだけ赤石に救われた気がした。
***
少ししてから若たちのところへ戻った。すでに飯を食っててユキはオムライスを美味しそうに食べていた。
「あれ?赤石頬っぺ腫れてんぞ?」
「殴られましたー!」
「命に?お前何したんだよ!」
大きい声で話す二人。それに若干呆れているとユキが俺を睨むように見ていて不思議に思いながらユキの隣の椅子に腰を落とす。
「赤石さんと命、二人きり、ダメ…っ」
「…忘れ物取りに行ってただけだろ」
嘘だけど。何か色々あったけど。
「僕、命いない、嫌だ」
「…そうかよ」
「一緒、いる」
口の回りにケチャップつけたまま言われても。ティッシュでそれを拭ってやるとそのまま唇を尖らせて突き出してくる。
「…キスはしないぞ」
「なんでぇ…!」
「外はダメだって言ってるだろ」
ユキの耳元で小声で話す、若に聞かれたらたまったもんじゃないから。
「お部屋、行ったら良いの?」
「いいよ」
「赤石さんは?」
「…いるけど、いない」
赤石にはバレてるんだし。キスを見られるくらいどうってことない。
「いるの…?僕、恥ずかしい、ちゅーできない…」
「何だよお前」
ここではできるのに、赤石の前ではできないのかよ。ハハッと笑みが漏れてそんな俺に怒ってるのか頬を膨らましているユキは残りのオムライスを口の中にいっきに詰め込んだ。
「おいおい、口パンパンじゃねえか」
「ん、んぐ…んごご、ぐ」
「話すのは飲み込んでからだって。」
ユキに水を渡すと、慌てた様子でそれを飲んでいた。
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