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第106話

飯を食べた後、若頭達だけで話をするということで、俺たちはその部屋の前で見張っている。ユキはソファーに座って絵本を読んでいて、そんな姿に赤石も可愛いねえと口元を緩ませていた。 実はこの出張で気になっていたことがあった。 「なあ、明日もこんな感じか?」 「えー?明日は遊園地にでも行くんじゃない?」 「…俺たちは若の遊びに付き合ってるってことであってるか?」 「そうだねえ。温泉行きたいとか遊園地行きたいとか、前から言ってたし。それをこの一週間にまとめたんでしょ?他の若頭さんだって行きたいのになかなかだったんじゃない?境遇が似てるから、皆も理解しあってて仲良いんだと思うし」 若は昔から遊びを制限されていた。遊ぶにしても護衛はつくし、正直やってられないと思ったことは何度もあるはず。なのにそんな不満を若が口に出したところを一度も見たことがない。あの人はそう言うものをきっと胸のうちに隠しているんだ。 「…俺たちが付き合ってるんじゃなくて、若に付き合わせてるんだよ」 「そうだな。…こっちの勝手な事情で下手に遊んだりできなかったんだもんな」 産まれたときから高い地位にあるのはどういう感じなんだろう。もし俺が若の立場ならふざけるなって家を逃げ出しているかもしれない。色々考えて、若は強い人なんだなと思った。 「命に赤石!俺らこの部屋で適当にしてるからお前らも休んでろ」 突然部屋から出てきた若にそう言われて赤石と顔を見合わす。 「でも俺らここでみてないと」 「大丈夫だって!親父も何も言わねえって。それにユキも可哀想だろ?」 「…勝手に外には出ないでくださいよ?」 そう言われちゃ引くしかない。ユキに部屋に「帰るぞ」と伝え赤石と三人で部屋に向かう。 「みっちゃぁん、1時間経ったら起こして」 部屋についてベッドに寝転がった赤石がそう言って目を閉じた。ユキはそれを見計らって俺の膝に向い合わせで座る。 「僕、たくさん、ちゅー、我慢した…」 「ああ、いい子だな」 「ちゅーしたい、ダメ…?」 首をコテンと傾け泣きそうな顔で俺を見るユキには背中を向けているから見えてないだろうけど赤石が目を開けてこっちをにやにや見ている。 「…一回だけだぞ」 「一回、だけ…ダメ」 「じゃあしない」 「…んぅ…命、また意地悪さん…」 頬を膨らまし俺の胸を軽くポンと叩いた。別に俺は赤石に見られてもいいけどお前が恥ずかしいってさっき言ったんだぞ。 「赤石が見てる」 「…えっ…赤石さん、起きてるの…?」 そうして赤石の方を振り返るけどそのタイミングであいつは目を閉じやがった。 「…寝んねしてる…嘘つき、だめ…」 「嘘じゃねえって。」 「ちゅー、したい…ちゅーしたい……!」 こんなにキスをねだる子供がいるか?と思いながらもユキと唇をくっつけた。一回じゃ嫌だって言ってたから何度も何度も繰り返してやると自分から離れていって、へにゃりと笑い俺の胸に凭れてくる。 「ちゅー、いっぱい…ふふっ」 キスがすごく嬉しかったようで、暫くはニコニコと笑顔のままだった。

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