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第107話

「おトイレ!」と便所行ったユキを確認して起き上がった赤石は俺を見てにやにや笑った。 「ユキくん意外と大胆だねぇ」 「お前のせいで俺が嘘つきになったじゃねえかよ」 「何のこと?俺寝てたしー!…ふがっ!」 ケラケラ笑う赤石にソファーに置いてあった二つのうちの一つのクッションをぶん投げた。 「もう、みっちゃん子供みたいなことしないでよ」 「うるせえよ」 「命、お話…あ、赤石さん…?」 便所から戻ってきたユキが、俺と話してる赤石を見て驚いている。 「…赤石さん、起きてたの……?」 「寝てたよ」 「見てない…?」 「何を?」 「僕と、命の…」 ユキが言いそうになったところで口を両手で塞いでやる。 「ユキ、それ言ったらバレるぞ」 「…あっ!」 「えー?何々?ユキくん、何してたの?」 顔を赤くして俺の膝の上に乗り胸に顔を押し付けて赤石の言葉を無視した。 「…赤石のことが嫌いだってよ」 「…僕、言ってないぃ…命…嘘つき、悪い子…」 「そうだ!みっちゃん悪い子!」 もう一つのクッションを赤石の顔面にぶん投げておいた。 そのうち赤石はユキとお絵描きを始めて、そんな様子をチラリと見ながらも手元の小説に目を落としていた。 何度もあくびが出る。読んでる小説の文字が所々しか入ってこない、眠たい。本を閉じてソファーにだらっと凭れると襲いかかる睡魔、あっさりとそれに負けて目を閉じた。 *** トントンと肩を叩かれて目を開けるとユキの顔が視界いっぱいに見えてユキを少し自分から離した。 「何?」 「見て…?」 お絵描きをしていたスケッチブックを俺の前で広げて絵を見せてくる。俺とユキが手を繋いで笑っている絵だった。 「上手…?」 「ああ、上手い。」 「ふふっ。僕ね、命と仲良し…!」 ふんわり笑うユキが可愛くて頭を撫でてやる。そこに赤石が「ねえねえねえ!」と入ってきて俺に1枚の紙を見せた。 「…ワニか?」 「違うよ!!犬!!」 「犬?」 そこには長細い平たいどう見てもワニのような姿をしてる生き物の絵があった。ユキもそれを覗き込んで「ワニさん?」と首をかしげている。 「犬だってばぁ」 「犬はこんなに足短くねえし、尻尾も尖ってないだろ。顔も長すぎる」 赤石は絵の才能が全くないのだと知った。
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