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第112話
明日、やっと家に帰れる。
ユキは早く明日になりますように、と9時にはベッドに入り深い眠りについている。
「やっぱりユキくん退屈だったんだろうね」
「俺たちでさえ暇だったしな」
はぁーと溜息を吐きながら今回の出張で何も問題はなかったかと早河から送られてきたメールに返信している赤石。
「問題なんて強いて言うなら暇だったことだよねえ」
「そうだな」
クックッと笑うと赤石もつられるように少し笑って大の字でベッドに寝転ぶ。
「明日帰ったら3日休みもらおうかなぁ!」
「早河が許してくれたらいいな」
「せめて2日は欲しいなぁ。女の子とたくさん遊ぼう」
「この子可愛いんだ」あと連絡先を見せられ「あーはいはい」と言えば「みっちゃんが俺の相手してくれないからこの子たちに遊んでもらわないとさあ!」と返されて黙るしかない。
「みっちゃんは溜まったら俺が面倒見てあげる!」
「遠慮する」
「ええー!!」
起き上がって残念だって顔で俺を見て肩を落とし唇を尖らせる。
「一回くらいセックスさせてくれたらいいのに」
「無理」
きっちり断ってからベッドに寝転び目を閉じた。
***
「赤石さん、ハルくん、ばいばい!」
「おう!またな!」
「またねえユキくん」
手を振るユキの隣で若に軽く礼をしてから自分の車に乗った。家までの帰り道、ユキは家に着くのはまだかまだかと外をそわそわした様子で眺めている。
「ベルト外して」
マンションについて車からおりる、急いでおりて俺と手を繋いだユキは「早く早く!」と腕を引っ張って急かしてくる。
「わかったから、引っ張るな」
「ぁ、ごめんなさい…」
シュンとしたユキの手を今度は俺が引いてエレベーターに乗り玄関の前まで来た。
「鍵…僕、開けたい…」
「いいよ」
鍵を渡すと裏表反対にさそうとしたり、させても「回せない!」と言い出したりしたけど無事に開いた扉、部屋に入ればユキはすぐに靴を脱いで中にドタドタと走っていく。
「お家、ただいま…!」
「ただいま。」
ソファーにピョンと乗り嬉しそうに跳ねるユキに笑みを漏らしながら荷物を部屋の端に置き、俺もソファーに腰かける。
「命、命…」
「んー?」
「ちゃんとお家…帰ってこれたあ…!」
「そうだな」
「嬉しい…!」
口許を歪ませてふふっと柔らかく笑ったユキの頬を撫でてそのまま後頭部に手を添えて引き寄せる。
「…っん…」
ユキと触れるだけのキスをして…たった一度のそれだけでも心が満たされる。
「命、ちゅー、したかった…?」
「…まあな」
「ふふっ、命、僕…大好き……」
抱きつくユキを強く抱き締めた。
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