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第113話

帰ってきたのはちょうどお昼を過ぎた頃だったから、軽く食事をして疲れたぁとソファーに寝転んだ。 「命、寝んね…?」 「ちょっと休憩」 「休憩…?僕も、休憩する…」 床に寝転ぼうとするから慌ててそれを止めて、ソファーの内側に寝転ばせ、俺はユキが落ちないように外側に寝転ぶ。気を抜いたら落ちそうだ。 「ちょっとだけ昼寝するか?」 「お昼寝…する…!」 スリスリと顔を俺の胸に擦り付けて笑ったユキの表情は嬉しそうで、そんなに眠たかったのか。とユキの背中を撫でてやると5分もしない内に眠りに落ちた。 俺も目を閉じるだけ閉じる。何もしてないのに疲れたなんて言ってるのを早河に聞かれたら怒られるんだろうなあ。 時計の秒針の音とユキと俺の呼吸が響く部屋。ついつい溜息が零れた。 「命…?起きて…?…あっ!!」 ユサっと揺らされてドンっと体が地面に打ち付けられ鈍痛で目を覚ました。 「ごめんなさい…痛い…?」 「…大丈夫」 体勢を直してユキの頭を撫でればユキは困ったような申し訳なさそうな表情をして薄く笑った。 ぐーっと伸びをしてから時間を確認する。少しだけ昼寝するつもりが2時間も眠ってしまっていたようで今は午後4時。 「買い物行くかぁ」 食材がない。買い物と聞いて顔を勢いよくあげたユキは「僕も行く」と言って俺の服をちょんちょん引っ張った。 「おう、晩飯何がいい?」 「えっと…あ!ハルくんが言ってたの…パスタ?食べたい」 「パスタな。じゃあそうするか。」 身だしなみを整えて財布と鍵を持ちユキと手を繋いで家を出る。 「……そうだ…」 少し思ったことがあって、今からいく買い物がまた少し楽しく思える。 ユキはどんな反応をするだろうか、それを想像しているといつの間にか口元が緩む。 「パスタ楽しみ…!」 「俺も楽しみだ」 いつものショッピングセンター。大きなそこはたくさんの店で溢れている。いつもはその内の一部にしか行かないが今日はユキに見せたいものがあって少し違う場所に足を踏み込む。 「命…今日…こっち…?」 「ああ」 ユキは不安そうにしているけれど、きっとこの後お前は喜んでくれる。 たしかこの階のもうひとつ下に…エスカレーターに乗りひとつ下の階に降りる。エスカレーターの黄色い部分を踏まないようにユキはずっと下を向いたまま。 ずっと前を見てると見えてきた目的地。 ああ、やっぱりここにあった。 エスカレーターを降りた先、そこにあったのは 「猫さんだあ!!」 犬や猫がたくさんいるペットショップ。 今じゃショッピングセンターの中にペットショップがあるんだなあ。 珍しく大きな声を出したユキは早く早くと俺の手を引っ張って綺麗な白猫の前でピタリと止まる。 「猫さん…可愛い…ふわふわだぁ…」 『ミャー』 一枚ガラスの向こう側、猫がユキを見上げて鳴いた。猫に触りたいと手を伸ばすけれどガラス一枚がその邪魔をする。 「猫さん…」 「ユキ、猫飼いたいか…?」 いつも俺の仕事の時、トラのところにいるだけじゃ寂しくはないだろうか、とか。急用の時なんかはユキを一人にしてしまうからユキの好きな猫がいてくれたら少しは寂しくならないのか、とか。色々考えた結果ユキもちゃんと世話をして愛してあげるなら、猫を家に招いてもいいんじゃないかと思った。 「猫さん…飼えるの…?」 「ちゃんと世話をして、可愛がってあげれるならな」 「猫さんは、お家来るの、嬉しい…?」 「…それはわかんねえなぁ…」 そういうと一気に不安そうな顔になるユキ。 「猫さんに、聞く、していい…?」 「ああ。」 一番初めに近寄ったあの綺麗な白猫に「僕のお家、来ますか…?」と聞いている。 猫がガラスに足を当てて肉きゅうがぷにっと少しつぶれる。そこにユキが掌をポンと当てた。 「お家、来る…?」 『ミャー』 猫が鳴いた瞬間ユキは俺に振り返り満面の笑みを見せた。

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