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第116話 ユキside
今日は僕の大好きな猫さんがお家にやってきた。真っ白の綺麗な猫さん、名前はシロって言うの。
今はお風呂上がり、命に髪の毛を乾かしてもらってからベッドの上に寝転んでいたシロくんに手を伸ばした。
「シロくん」
シロくんの頭を撫でると僕の手にクイクイって頭を擦り付けてくる。もっと頭を撫でてほしいのかなぁ…?
「頭、撫で撫で…嬉しいの?」
青色のお目目が僕を見る。綺麗だなあってまたシロくんの頭を撫でると急にスッて立って尻尾をゆっくり振りながら僕から離れていっちゃう。
「シロくん、行かないで…」
シロくんは初めてここに来て、しかも僕とシロくんは初めて会った。命がそっとしてあげていた方がいいって言うからシロくんを追いかけたりはしないけど、やっぱり寂しい。
シロくんに手を伸ばすけど届かなくて、悲しくなる。ずっとお空にあるままの僕の手、急にそれを掴まれてびっくりした!
「ユキ?何してんだ?」
「あ…命…」
「ん?どうした?」
命はベッドの端に座ってそのまま僕のお手手を優しく引っ張って僕をお膝に乗せてくれた。
「シロくん…」
「シロ?そこいるぞ?」
そこって命が指差したのはお部屋の隅っこ。僕もそこにいることは知ってるんだけどね、でもね、違うの。
「シロくんは、寂しく、ないの…?」
「シロはわかんねえけど、ユキは寂しいのか?」
「僕、寂しい…お胸苦しくなるの。キューってして…涙でてきちゃう…」
「一人の時?」
「うん…でも、みんなといるときも、ちょっとだけ…寂しい…」
皆と違って僕はチビだし、愚図だしノロマだし。僕だけ皆と違って寂しくなっちゃう。
「どうしたら寂しくなくなるんだろうな」
「わかんない…、命ギューして…?」
そう言ったら命はいつも僕が少し苦しくなるくらいにギューしてくれる。心がポカポカになってその時は全然寂しくないよ、暖かくて幸せな気持ちになれるの。
「シロくんはギューされるの、嫌い…?」
「今はそうかもなあ。ここに慣れて、ユキにも慣れたら嫌いじゃなくなると思う。」
「そっかぁ…」
今までシロくんはどんな生活をしてたのかな。小さな窮屈なあのお箱の中で苦しかったのかな。もしかして怖いことされたりしたのかな。
僕はシロくんの嫌なこと絶対にしないよ、だからギューしたりも追いかけっこも今は我慢するね。
「我慢…我慢、我慢…」
「何を我慢?」
「シロくんにギューするの、我慢…」
そしたらシロくんは僕のこと好きになってくれるかもしれないもん。
命が「寝るぞ」って言って、お部屋を暗くする。命にくっついて、少しだけお話して、眠たくなったから目を閉じた。
***
今度目を開けたときは命が隣にいて安心した。でもお腹がちょっと苦しい。重たくて何だろう、とそこを見るとシロくんがいた。
「シロくん…おはよう、ございます…」
シロくんのお尻がこっちに見えているから真っ白なお餅みたい。そのお尻をふわふわって撫でるとシロくんのお顔がこっちに向いた。
「僕のお腹の上、気持ちいの…?」
返事はしてくれなくてそのままフイって向こうを向いちゃう。まだ僕とは仲良しになってくれないみたい。
「ん…ぅ…」
隣の命がモゾっと動いた。慌ててお口に両手を当てる、起こしちゃったかなぁ。
「…お口、ばってん…」
「ミャァ」
「ダメだよ、お口ばってんなの…話すの、だめだよ。命が起きちゃう…」
「ミャー」
「ダメだってぇ」
起き上がってシロくんのお口の前で人差し指を立ててシーってする。そしたらシロくんはその僕の指をペロペロ舐め出した。ザラザラしてて擽ったい。
「ふふっ」
それに笑っていると
「…あー…あれ、ユキ…?」
いつもよりちょっと掠れた大好きな声が聞こえてきた。
「あっ…命、おはよう、ございます…」
「…おはよ」
命が眠たそうにあくびをする。僕がうるさくしちゃったから、命が起きちゃった。
「…今日…お仕事は…?」
「休み」
「お家、いるの…?」
「いるよ」
やったあ!嬉しくて命を布団の上からギューって抱きしめた。
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