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第120話

*** 「本当にトラのとこ行かなくていいのか?」 朝、今日は「お留守番するの。」と言って服を着替えなかったユキと玄関で話をする。 「シロくんと、待ってるの」 「そうか。弁当置いてるし、お腹すいたら何でも食っていいから。ピンポンって鳴っても出なくていい。テレビでも本でも、好きにしとけ。何かあったらここに電話すること。わかった?」 「うん」 「……本当に大丈夫か?」 しつこく何度も聞くけど、心配だから仕方ない。 「僕ね、大丈夫だよ。ちゃんといい子してる…!」 「…わかった。じゃあ行ってくるな」 玄関を開けてユキに手を振ってからドアを閉めた。ガチャっと中から鍵をちゃんと閉めた音がして少し不安ながらもエレベーターに乗り込んだ。 「命さん!おはようございまーす!」 組に着いて車を預けると葉月の明るい声が聞こえた。 「今日は何の日でしょう!」 「何かあったっけ」 「ありませーん」 ヘラって笑った葉月にイラっとして俺も笑う。こいつたまにうざい。 「さあさあ、早河さんが待ってますよー?ついでに言えば鳥居さんも」 「鳥居が?」 「なんだっけ…猫?早河さんにだけずるいとかなんとか…」 ああ、なんとなくわかった。 早河にだけユキとシロの写真を送ったから拗ねてるとか、そんな事だろう。 鳥居は面倒だから先に早河のところにと幹部室を開けたら不貞腐れた鳥居がソファーにどっかり座っている。 「ああー!命さん!!何で俺には写真くれないんですかぁ~!」 「うるせえ」 「ずるいずるい!早河さんにだけぇ!」 とりあえず黙らせようとユキとシロの写真をすぐに鳥居に送る。ブーブーと鳥居の携帯が震えてムッてしながら内容を確認した鳥居は瞬時に柔らかい表情になった。 「可愛い…猫ちゃん名前なんて言うんです?」 「シロ」 「シロかぁ~!可愛いなぁ~!!」 携帯を握りしめて部屋を出ていった鳥居。 静かになった部屋の中にいた早河に「おはよう」と挨拶をした。 「おう」 素っ気ない返事が返ってきた。

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