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第132話
次の日の朝、ユキに今日はどうしてもっていってトラのところに預けに行った。
時刻は9時半。赤石が来るのはあともう少ししてから。ユキには仕事だといってるわけだからスーツを来ていたわけで、帰ってきて早々に楽な格好に着替えた。
家に一人でいるのなんて久しぶりだ。ユキがいないからどこか虚無感はあるけれど、あとで帰ってくるとわかっているから耐えられない程じゃない。
ピンポーンと軽快な音がなった。玄関に行ってドアを開けると赤石がやっほーって笑顔で手を振ってる。
「お酒たっくさんあるよ」
「…後でユキ迎えにいかねえとダメなんだけど」
「そんなことは早河に頼んでるよ」
無遠慮に靴を脱ぎリビングに上がる赤石の後ろを追ってソファーに座る。
キッチンに行った赤石は酒を冷やすやらなんやらで、荷物を片付けてから俺の隣に座った。
「もう落ち着いてる?」
「何が」
「昨日の事、もう何も思ってない?」
「…………」
「…まあ、そんなわけないよねぇ」
煙草を吸いだした赤石、窓を少し開けて話を続けてくる。
「今回のはまあ、みっちゃんにも責任あるっちゃあるよね、ユキくんがいなかったら…なんてことも考えちゃわない事もないし。」
「…そんなこと言いに来たのかよお前」
「違うよ?」
「じゃあなんだ…よ…」
一瞬にして距離を詰められる。目の前に火のついた煙草。それより気になるのは赤石の目。
「俺がみっちゃんのこと諦めてると思う?」
「はっ…?」
「ユキくんのせいでみっちゃんが落ち込んでるんなら、俺はすごいムカつく。この前も言ったよね?ユキくんの事で嫉妬してるみっちゃんがムカつくって。」
目の前から煙草が退かされた、かと思えばキスをされてすぐに離れる。絡む視線、赤石の目は本気だ。
「今日はユキくんもいないよ」
「…だからって」
「俺をここに招いた時点でその気はあるでしょ?」
「…………」
正直一瞬でも今回の事が頭から離れたならなと思った。だったら何でもいいやって、俺に気がある赤石を家に招いていた。
1度落ち込めばずっと引き摺るのは俺の悪い癖。わかってるけどそういうものはなかなか直ってくれない。
「そうなんでしょ。みっちゃんはいつもそうだよ。落ち込んだらずっと引き摺ってる、そういうとき、ユキくんがいない頃は何してた?思い出しなよ」
「っ…」
「1日だけ適当な女を抱いて、次の日にはいつも通りになってたよね?」
「それは…っ…」
「ユキくんがいなかったからとか、関係ないとか、そんな言い訳は聞かないよ。…ねえ、今回は相手が女じゃないってことと抱かれる側になるだけ。」
だけじゃねえだろって言いたいけど、言える空気じゃない。目元を赤石の手で覆われる。視界が暗転、抵抗する気にはなれないまま
─────過ちを犯す。
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