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第133話
くたっと力無く寝転がる俺に水を差し出す赤石。起き上がるのが億劫で「要らない」と首を振った。
「飲まないの?」
「飲めない」
「上向いて」
仰向けになれば口に水を含んだ赤石が、そのまま俺にキスしてゆっくり水を流し込んでくる。それを俺が飲み込んだのを確認してから離れた赤石は「まだいる?」と言ってペットボトルを振る。それに頷けばもう一度同じ行為が繰り返された。
「タオルとってくるね」
「ん…ついでに酒持ってきてくれ」
「はいはーい」
下着だけ履いた赤石が部屋を出ていく。それを見ているうちに視界が歪んだ、涙がたまる。
泣きたくない、泣きたくなんかない。
「……っ…く…」
なのに、思いに反して涙は出た。何の涙かは全くわからない。
「はーい。酒だ、よ…って、どうしたのー」
そんな姿を見られて屈辱以外の何でもない。
「泣かないで」
頭を撫でられ、額にキスされた。
「わかんねえ…」
「んー?何が?」
「俺も、もしユキがいなかったらって、一瞬でも思っちまった。…なのに、こんな俺がユキと一緒にいていいのか、わかんねえ」
赤石からタオルと酒を受け取って体を拭き酒を飲み込む。
「大丈夫だよ」
「あ…?」
「また、落ち込んで、そこから抜け出せないなら俺を利用したらいい」
「…………」
「それでも俺は嬉しいんだよ。みっちゃんが大好きだから」
そして触れるだけのキスをした。
***
昼になって動けるようになった俺は風呂に入ってからソファーに寝転んでボーッとしてた。そんな俺の上にはシロが乗ってる。
「みっちゃん、シーツとか洗うね」
「俺がやる」
「いいよ、寝ときな。まだ違和感あるんでしょ」
シロを下におろして半分起き上がっていた体をソファーに戻し、テレビを点けた。特に面白い番組はしていない。けど音がないのも寂しくてテレビはそのままに目を閉じる。
「みっちゃん…?あれ寝ちゃった?」
「起きてる」
「お腹すいてない?」
「空いた…」
「飯作るね、待ってて」
何もかもさせて申し訳なくなって、キッチンに向かう赤石の腕を掴む。「俺もやる」って言うと笑ってじゃあ一緒に作ろうって。
「あーあ。ユキくんがいなかったらこういうことできなかったんだろうけど、みっちゃんと付き合えたかもしれないのかなぁ」
「付き合う気なんてねえよ。それに…仮の話すんな」
「はいはい、怒らないでー」
別に怒ってないのに、俺の方を向いた赤石は触れるだけのキスをしてくる。
「…飯食い終わってもまだまだ時間あるね」
「ああ」
「…みっちゃん、好きだよ」
「ありがとな」
「うん」
赤石の泣きそうな顔が一瞬だけ見えた。
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