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第140話

そしてやはりここは茉美の部屋だったらしい。ヤクザの家でこんなにピンクピンクな部屋を見たのは初めてだ。 「早速だけど父様に挨拶しにいくわよ」 「はい」 見えない鎖がつけられてる俺は逆らうこともできなくて茉美の後ろを大人しく歩く。 「ここよ」 しばらくしてついたところはあまりにも豪華な扉のついた部屋。茉美がノックをして声をかけ中に入る。続いて俺も一礼して中に入ると見定めるような視線が芦屋から飛んでくる。 「父様、命よ」 「…黒沼命です」 頭を下げると突然ペシッと頭を叩かれた。何事かと顔をあげると芦屋の持っていた扇子で叩かれたらしい。イラッとしたが無表情を決め込んで頭をあげた。 「はっ、茉美。こんな男の何がいいんだ」 「何って…かっこいいじゃない」 二人の会話はただのBGMのように聞いているようで聞いてないそんな感じで過ごしていると、いつの間にか話は終わったらしく、「行くわよ」と茉美に声をかけられ部屋を出ることに。 「命の部屋に案内するわ。」 「…ありがとうございます」 部屋なんか要らねえから家に返してほしいんだけど。そう思ったがそんなことは当たり前に無理で。けれど俺に与えられた部屋にシロがいるんだと思うと嬉しくなった。 与えられた部屋はかなりの広さがあった。テーブルにベッドに…部屋に入るとベッドに座ってたシロが鳴きながら俺の足に擦り寄ってくる。 「可愛らしい猫ね。でも見た目だけ。あたしが抱こうとしたら爪で引っ掻いてきたのよ」 「すみません」 「いいのよ。テーブルの上にすることを書いた紙を置いてるわ。パソコンも携帯も。携帯はこっちが新しく用意させてもらったから。」 それだけ言い残し部屋を出ていった茉美。俺とシロだけになってたまらずシロを抱き締めた。シロは嫌がってたけど、それでもこうすると安心した。 芦屋から与えられた携帯だから無闇に連絡もとれない。ニャーとシロが俺の膝の上で鳴く。頭を撫でると目を細めた。 「…白い雪は消えない……」 ────ユキは必ず守る。 きっと親父はそう言ってくれた。早河からもう連絡がいってるんだろう、親父と早河で守ってくれるなら何も心配はいらない。 「ユキ…」 ポツリ呟いた。

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