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第143話
茉美と別れて自分の部屋に帰るとシロがパソコンの上で寝転んでた。
薬は見つかった。これを親父に何とかして伝えなきゃいけない。でもどうやって?外には行かせてもらえないし電話だってなかなか……
と思ったところで頭に浮かんだのはトラの顔。仮病でも何でも使ってトラのところに何とか行けないだろうか。
「ミャー」
俺を見てシロが鳴く。
「シロ…」
そうだ。シロがおかしいといって動物病院だといってトラのところにいけばいい。トラだってきっと何かを察してくれる。
「シロ悪い、俺に付き合ってくれ」
「ミャー」
まるでいいよ。と言っているように聞こえた。
***
「猫ちゃんがおかしい?」
数日後茉美にシロがおかしいと伝えるとすぐに動物病院に行く許可をくれた。勿論茉美は俺についてくる。そんなことは想定内だから何とも思わない。
シロと俺と茉美が乗る車、トラの病院の古い建物をみて茉美は顔を歪めた。
「せんせー」
初めからトラを先生と呼んで俺とトラの関係を変に勘繰られないようにする。
「…ああ、黒沼さん。」
トラはそんな俺の雰囲気を感じ取ったのかいつものオカマ口調ではなく、ふざけた様子は一切感じられない。
「シロの様子がおかしくて」
「…診てみますね、そちらでお待ちください」
予めシロの入ってるゲージの底に状況とこれからこうしてほしい、巻き込んで悪い。と書いてある紙を貼っていた。トラは何か細工があると思ってくれたようで別の部屋にシロと入り俺たちにここで待つようにという。
「命はいつも猫ちゃんをここに連れてきているの?」
「はい」
「何だかとっても古いところね。」
そう言って置いてあったソファーに座り溜息を吐いている。
「疲れたわ」
「お付き合いさせて申し訳ありません」
ヤクザの娘の癖にそんなので大丈夫なのか。狙われたりするんじゃないのか、思うことはたくさんあったけれど疲れたという茉美に笑顔を向けた。
少ししてトラは戻ってきた。
「特に心配はいりません。数日したら元気になるでしょう」
「そうですか、ありがとうございます。」
シロの入るゲージの底に触れると紙の感触。トラからか?トラをみればウインクをしてきて小声で「ありがとう」ともう一度伝えた。
トラのところを出て車に乗るときに紙をとってポケットに入れておいた。茉美は後部座席で眠っていて、気を使わなくていいと思うと自然と深い息が零れる。
組について茉美を起こし、シロを抱き部屋に帰る。シロと二人きりになってから紙を確認すると”任せなさい。”と書いてあって安心した。もう少しでユキを迎えにいけると思うと嬉しくて頬が緩む。
「シロ、ありがとな」
狭い中で疲れたんだろう。眠ってるシロの体を撫でて、置いてあった資料に目を通し作業を始めた。
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