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第155話 命side

怪我も完治して3週間くらいが経った頃。 普段組に泊まり込みみたいな形で仕事をしてる早河が毎日夜遅くにだけど家に帰るようになった。 それからまた少しすると組に朝来る時間も遅くなった。 「お前がこんな時間とか、どうしたんだよ。」 「別に遅れた訳じゃねえだろうが」 「そうだけど、珍しいなぁって」 少し不機嫌そうな顔をしてる早河には薄く隈があった。 「最近ちゃんと家に帰ってるらしいしよ、何かあったのか?」 「…お前と一緒だ、拾い物をした」 拾い物…? 俺と一緒ってことは子供を拾ったのか? 「ガキか?」 「まあ、高校生だ」 「女?男?」 「男。」 それを聞いてなんだか面白くてクックッと笑う、すると早河も俺につられるように苦笑をこぼした。 それにしても…… 「お前がなぁ。今度会わせろよ」 「家に来ればいい」 じゃあ今度ユキと家にお邪魔しよう。 *** 仕事をこなして、顔を上げる。すると幹部室の自分の席で肩や首をゴキゴキ鳴らしてる早河が目に入った。溜息も吐いて…大分お疲れらしい。 早河のためにコーヒーを入れてやってデスクにコトンと置いてやると顔をあげた。「お疲れ。」と言葉をかけてから気になってることを聞いた。 「お前ちゃんと寝てるか?」 「寝てる」 絶対嘘だーと心の中でからかうように思う。 「そうか?さっき言ってた高校生のせいであんまり寝れてないんじゃねえの?お前あんまり人が好きじゃねえんだし」 人が好きじゃないっていうのはちょっと違うか。早河は結構神経質だし、人と距離をある程度保って接している。俺にさえも本心を漏らすことはなかなかない。だからその高校生が家にいることで結構疲れてるんじゃないか…? もしそうなら、その高校生には申し訳ないけど、俺はそいつより早河の方がよく知ってるし、大切だから。 「もししんどいなら追い出せよ」 「追い出すなんてできねえよ。」 即答で言葉を告げられて苦笑する。そうだ、お前は優しいやつだもんな。 「なら、たまには休め。仕事だってお前程じゃねえが俺だってできる。」 「……ああ」 「ほら、本当は寝れてないんだろ、親父に言ってきてやるから今日は帰って寝とけ」 さすがに自分でも疲れていることは自覚していたようだ。頷いて立ち上がる早河…っておいおいおい、なんで資料を手に持ってるんだよ。 「資料を持って帰るなよ」 そう言うと早河の眉間にシワが寄る。 「俺の仕事だ」 「休むときは休むんだよ」 「うるせえ」 「何でそんなに仕事が好きなのお前って…」 頑固なやつだ。ならせめてと、半分は置いていけというと舌打ちをされた。 けどそんなもの関係ない、早河が持っていた資料を半分引ったくった。 「はい、お疲れさま。」 「…ああ」 幹部室を出ていく早河に手を振った。

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