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第2話

東城が事件の捜査中、容疑者のグループと揉み合いになり頭を強打し、ここ数年の記憶がそっくりなくなってしまった。 それを広瀬が聞いたのは先週のことだった。 彼は、姉の美音子が経営している医療センターに入院し、ありとあらゆる検査を何度もしたが、脳の中に原因は特定できず、記憶が戻るかどうかもわからないままだ。 広瀬は、入院中の東城の様子を2回見に行ったが、彼は、自分のことを全く覚えていなかった。一緒に暮らしている恋人だと美音子に聞かされ、驚いていた。 東城が退院する前日に、家事全般をやってくれている石田さんに会った。彼女は子供のころから東城のことをよく知っていて、東城と暮らすようになった広瀬とも親しくしていた。 記憶喪失のことを聞いて、広瀬が帰ってくる時間まで待っていてくれたのだ。 彼女は、いつも通りの家事をして、食べ物をどっさり作っていた。東城の子どものころの好物、広瀬が何度もリクエストした料理。それはもう冷蔵庫からあふれるほどに。 美味しいご飯をお腹いっぱい食べてれば、そのうちになにもかもよくなりますよ、と彼女は広瀬に言った。結局人間は、ご飯食べて安心して眠れるところがあれば、幸せなんですからね。だから、短慮をおこしちゃだめですよ。時間が解決してくれますからね。

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