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第9話

東城の不信感が広瀬にはわかる。彼の立場になって考えれば、彼の言っていることもわかる。 「俺は」と広瀬は言った。続ける言葉を探す。 上手く言葉がでてこない。不信に思う気持ちはわかりますが、こっちにも言い分がとか言ったら、さらに感情的になるだけだろう。 東城は待っていたが広瀬が次の言葉を続けないことに軽くため息をついた。 「言いすぎたな。あなたを責めるような立場じゃないんだけど、つい」 彼は溢れる感情をおさえようとしているのが広瀬にはよくわかった。 「あの」ともう一度話をしようとするが、彼は首を横に振った。 「遅い時間だけど、食事は?」 「これから食べます」 彼はうなずいた。「支度するの手伝うよ」 自分は食事を終えていたが、東城は広瀬のために食器や食材を並べた。ダイニングの向かいの席に座って、広瀬が食べ終えるのを見ていた。 時々、遠慮がちに、好き嫌いはないのかとか、今日の仕事はどうだったのかとか、あたりさわりのない話題をしてきた。 広瀬と口論したくないのだろう。 広瀬も、気を付けて彼に返事をした。そっけなくならないように、できるだけ丁寧に。質問に対して思いつくことを全部言葉にして並べた。 しまいに、お互いあたりさわりのない話は全くなくなり、二人は無言になった。

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