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第10話
翌日は、東城達史につかまることもなく、広瀬は家に帰った。東城は仕事には行っているが、早めに帰ってきている。試運転中といったところだろう。
昨日のピリピリした感じとは違って、彼はニコニコしていた。
いや、それよりももっと、いたずらっ子のような表情だ。なにか面白いことを知ってしまったというような感じ。
「おかえり」と東城は言った。
「ただいま」と広瀬も返した。
食事をしたあと、広瀬が風呂から上がってくると、東城がリビングからでてきて話しかけてきた。
「何か飲む?お茶かなにか」
広瀬はうなずいた。
リビングのソファーで待っていたら、東城が玄米茶を入れてきた。
「ありがとうございます」広瀬は礼を言って受け取った。
玄米茶は最近東城がどこからか貰ってきて、飲んでみたらたいそう美味しかったのではまっていたのだ。どうしてわかったのだろうか。
温かいお茶に息を吹きかけて湯気を払いながらゆっくりと飲んだ。香ばしい香りが口の中に広がってくる。身体からほんわかとあたたまってきて、こわばっていたところがほどけるようだった。
東城はお茶を飲む広瀬をにこやかに見ている。
「さっき帰ってきたら石田さんに会ったんだ。広瀬が帰ってきたらお茶くらいいれてあげろって言われた」
「そうですか」
それで、玄米茶のことを知ったのか。
「そうやって熱いの気をつけながらのんびりお茶飲んでると、かわいいな」
彼は、ソファーの肘掛けに浅く腰掛ける。
「今日、あなたと俺のメールのやりとり、全部読んだんだ。あなたのこと、知らなきゃ話になんないからな」
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