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第17話
「東城達史さんが、何を言っても、俺には関係ないです。よく知らない人ですし」
「だったら」と東城は言った。彼は、メモの紙を広瀬に差し出した。「これ、ここで破いて捨ててくれ。俺の目の前で」
広瀬は、彼の手を見ていた。
「東城さん」と広瀬は言った。
「なんだよ。引っ越す気もないし、達史さんともなんでもないなら、ここで破けるだろう」
「破くことはすぐにできます。だけど、そうしたからって、東城さんが納得するとは思えない」
「どういうことだ?俺が、なにを納得するって言うんだよ」
こうやって感情のままに詰め寄る口調は、前と同じだ。
「わかりません。東城さんは、なにを納得したいんですか?」
「禅問答かよ。俺が納得しないっていっておいて、なにかはわかんないってなんだよ」
広瀬は黙っていた。
東城も口を閉じる。
目の前に、達史の書いたメモは差し出されたままだ。
広瀬は、それを手に取り、細かく破りさいてみせた。パラパラと紙の破片が床にちらばる。
彼は、床のメモと広瀬を交互にみた。口を開いて何かを言おうとし、また閉じた。何度か逡巡したのちに、彼は聞いた。
「あなたは、今でも、俺の恋人なのか?」
広瀬は、答えられなかった。
こちらが聞きたいくらいだ。自分は東城の何なのだろうか。恋人なのか。彼は自分のことを全く知らないのに。
「東城さんは、何を望んでいるんですか?」
「俺?俺の望み?」
「はい」
「ごまかすんだな。まあ、いいよ。あなたがまだ俺の恋人なら、証明してほしい」
「証明?」
「そうだ」
「どうやって」
「俺と一緒のベッドで寝て、セックスする。恋人なら、できるだろう」
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