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第18話
寝室に入るのは久しぶりだった。広いベッドは冷え冷えとしている。東城は広瀬から手を放し、ベッドの端に座った。
広瀬は、ドアを背にして立った。このまま、部屋から出ることは簡単だ。寝室どころかこの家から出ていくことも。
東城は追ってくるだろうか。
「ドア、閉めて」と彼は言った。
広瀬は後ろ手でドアを閉めた。
「こっちに」と手招かれた。
自分を見る視線は厳しいものだ。ここから出ていこうというそぶりを少しでもみせたら、力づくで拘束するだろう。
広瀬は、ベッドに近づいた。
東城が聞いてきた。「服は?」
「自分で、脱ぎます」
「じゃあ、脱いで。俺に、見せて。全部」
広瀬がためらっていると声が続いた。
「靴下から脱ぐといい。靴下なら気軽に脱げるだろう」
広瀬は腰をかがめて足をあげて靴下を脱いだ。彼の視線が足首のところにある。
「次は、シャツ、脱いで。袖を抜いて、首を、そう」
言われた通りに動くと、操られているような感覚になる。身体がこわばりただシャツを脱ぐだけなのに動作はギクシャクとした。
東城は表情を動かさない。だが、こういう時の方が彼は緊張し、動揺しているのだ。自分の感情の揺れを自分でも知りたくなくて、無表情になるのだ。
少なくとも広瀬の知っている彼はそうだった。
脱いだシャツを床に落とした。彼の前に身体をさらすことが耐えられず、視線を避けるために横を向いた。
「恥ずかしい?赤くなってる」
そう指摘されると恥ずかしさがつのる。首まで赤くなっているだろう。広瀬はうつむいた。
「数えきれないくらい俺の前で脱いでるんだろう。そんな風に恥じらうなんて」と彼は言った。「身体も整ってるんだな。乳首、少しだけ色がついてる。俺がかわいがってたから?」
彼の声がわずかに熱を帯び始めている。
「下は?」と聞いてくる。「脱がないのか?」
広瀬はイージーパンツの腰のゴムに手をかけたが、ためらってしまった。
すると東城が言った。
「ゆっくりするともっと恥ずかしくなるから、脱いでしまったほうがいい」
視線は吸い付くように自分を見ている。
言われるままに足元に落とした。下着も脱ぎ、足から抜いた。
彼が息を飲むのがわかる。
「すごいな。写真なんかより、はるかに、綺麗だ」
手が伸びてきて手首をつかまれ、そのままベッドにからめとられた。
その彼の勢い、手の熱さに、本意ではなかったが、わずかに怯えてしまった。
身体がこわばるのがわかったのだろう、東城は顔をしかめて、広瀬を自分の下に組み伏した。
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