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第19話
体重ごとのしかかられると、手足が押さえつけられて動けない。
乱暴に唇を合わされた。
キスは長く乱暴で、痛みを伴うものだった。荒々しくかき回される。最初は顔を背けようとしたが、動かすことはできず、しまいには、息ができなくなってしまった。
苦しくて、もがくが放してはくれない。
混ざり合う唾液が喉から気管に入り、咳き込んだ。
やっと、彼が解放してくれる。広瀬はしばらく咳が止まらず、肩で息をし、これ以上キスをされないように、身体をよじり、うつぶせになった。
背中から、抱きしめられる。腕の力は強い。骨がきしみそうだ。彼は、躊躇なく自分の感情を行動で示してくる。
背後からの彼の声は、絞り出すようだった。
「俺なのに。広瀬さんの、記憶の中にある俺に、嫉妬してる。嫉妬どころじゃない」ぐっとかかる手が強くなった。「あなたの目、いつも、俺を見ているのに、俺の知らない俺を探してる。殺してやりたいよ。俺自身なのに俺じゃない、そいつを」
下腹部の固い欲望を腰に押し付けられた。
「俺、独占欲強いんだ。広瀬さんを、誰にもわたしたくない。それが、俺自身だとしても」
彼の指が乱暴に髪をまさぐってくる。強い力で、再度顔を自分の方に向けさせた。唇を合わされた。激しく中をかきまぜてくる。
目を閉じて、逃げようとすると唇の端を噛まれた。
「俺を見ろよ」と彼は言った。「俺のことを見てくれ。他のことは、全部忘れて」
揺さぶられて、広瀬は目を開けた。先ほど咳き込んだ時の涙がこめかみを伝い落ちる。東城は、その涙を指ですくった。
広瀬は何度かまばたきした。また、涙の粒がころがって、シーツに吸い込まれていく。
「俺には、抱かれたくない?」
涙の向こうにみえる彼の顔が、ひどく苦しそうだった。
広瀬が首を横に振った。手を伸ばして彼の背中に手を回した。引き寄せると、胸に顔をつけてきた。
広瀬はできるだけ身体の力を抜いた。すると、次第に彼のしぐさから荒々しい乱暴さは減っていった。
彼が、額を胸にこすりつけてきた。両手が身体を触れてくる。広瀬の反応をうかがいながら、手探りしてくる。
広瀬は、彼の頭をなでた。髪や頭の形、太い首筋。耳、あごの骨。指で、今まで何度も触れていた彼の形。かかる重みも彼そのものだ。
彼が深呼吸する熱い息が皮膚にしみ込んでくる。その熱も、広瀬の知っている彼だった。
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