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第21話

柔らかな朝日が室内を照らしていた。 寝室はこの家で一番明るい朝を迎えるつくりになっている。 朝起きた時にその日一日を新鮮な気持ちで始めるためだよ、とこの家に引っ越してきたときに東城が言っていた。前の日になにがあっても、朝日が昇れば別な一日だから、と。 目が覚めた時には、隣に寝ていた東城はいなかった。仕事に行ったのだろう。家の中には彼の姿はなかった。 その日の夜遅く、大井戸署を出た広瀬は時計をみた。家に帰るかどうか、迷ったのだ。 通常通りなら、東城は家に帰っているだろう。 正直なところ、彼と顔を合わせるのは気が引けた。 もし、このまま帰らなかったら彼はどうするだろうか。 探しに来るか。力づくで連れ戻そうとするか。 いや、そんなことはしないかもしれない。広瀬から遠ざかり、関係を切る方がいいと思うかもしれない。 お互いに知らなかったままにして、終わるという選択も彼にはできる。 だいたい、覚えていないのだ、なにも。広瀬と東城の間にどんなことがあり、どんな会話をしたのか、全然知らないのだ。 だが、そう考えるうちに、自信家で見栄っ張りの彼が、迷子の子どものような表情や声音を広瀬に見せていたことを思い出した。 今日は家に帰ろう。

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