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第22話
広瀬が帰ると、東城が玄関に出てきた。
「ただいま」と言って彼を見ると、うなずいた。
「おかえり」
靴を脱いであがると、彼が手を伸ばしてきた。驚いたがじっとしていたら、正面から抱きしめてきた。
「よかった。帰ってこなかったらどうしようと思ってたんだ」
それから、夕べと同じようにごめんと言ってきた。自分の悩みをあなたに押し付けてしまって、すまない、と。
広瀬は彼の背中をそっと抱き返した。少し早い心臓の音が聞こえる。彼の体温は暖かい。
遅い夕食をとった後、彼は、キッチンで広瀬のために玄米茶を淹れてくれた。室内はお茶の柔らかな香りで満たされていた。
湯飲みを広瀬に手渡そうとしたが、なにを思ったのか、キッチンのカウンターに置いた。
広瀬がとろうとすると制される。
理由がわからず、とまどってしまう。
急に、東城は広瀬の足元に跪き、手をとると指の先に唇を落とした。
「どうしたんですか?」
彼が見上げてくる。自分に向けられた視線は、少し眩しそうにしている。
「広瀬さんに、約束しようと思って」
「約束って」
「今は、広瀬さんは俺のこと好きにはなれない。俺も、前の俺と同じにはなれない。だけど、俺のこと好きにならせるから。広瀬さんのこと、もっとよく知って、あなたが俺に満足できるようにする。もちろん、今日、明日にもすぐってわけにいかない。我慢してもらったり、辛抱して待っててもらわないといけないだろうけど、でも、必ず、俺のこと好きになるから」
東城は言った。彼は笑顔で堂々としている。
「自信はある。絶対に俺のこと好きになって、他の男のことは忘れるから。だから、待っていてほしい。時間をかければ、大丈夫」
彼はそう言い、広瀬の指に再び唇を落とした。
「これは、その約束だ」
忘れないで、と東城は言った。
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