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第31話
それには返事をせず、広瀬は彼が操作を終える前の電話を奪った。ゲームはゲームでも、東城が想像していたようなものではない。
素早く東城から離れ、画面を切り替え、メールを開く。
「お前、なにすんだよ」
東城が焦った声で言い、電話を取り戻そうとしてきた。広瀬は、走ってその手をよけた。画面を操作しながら、浴室まで走る。鍵をかけた。
「広瀬、突然なんだよ」
すぐに浴室のドアが何度かノックされた。困惑しているようだ。
それはそうだろう。
広瀬だって、電話をしている彼を見て、思い出したのだから。メールをたぐって開いていく。フォルダーがいくつもあるもののごちゃごちゃで、整理しているのかしていないのかわからない状態だ。
探して探していくが、見つからない。
メールを見るのは諦め、一番問題が大きい写真の入っているアルバムを開いた。知らない人間の写真が山ほど入っている。食べ物の写真、風景の写真。
だが、肝心の写真がみつからない。どこに隠したのだろうか。
以前、記憶がなかった時に東城が言っていた、広瀬のきわどい写真。
背後で東城がドアをノックしている。
「広瀬、なにやってんだ?電話返せよ」
どうしても見つけることができない。広瀬が送ったメールも、東城が広瀬に送った卑猥なメールも、恥ずかしい写真も、動画も、なにもない。
ノックの音がいつの間にかやんでいた。それから、カチャッと音がしてドアが開いた。
「あ、」
東城が、眉間にしわを寄せてドアを開ける。外から開ける鍵が見つけたのだろう。
広瀬は後ずさりした。
「返せよ。子供みたいないたずらするなよ。俺に注意されたのがそんなに気に食わなかったのか?」
「メールも写真も、消してください」
「は?」
東城は最初わからなかったようだ。もう一度広瀬が言うと、しばらくして理解した。唇の端をあげてにやりと笑った。
「ああ、あの、メール」
「そうです。写真も。どこにあるんですか?」
「もう、とっくに消した」
「え?」
「消したよ。そんなとこにいれといて、誰がいつ見るかわからないからな。全部、消した。安心していい。見つからなかったろう」
東城は両手を広げて見せる。潔白ですよとしぐさで示そうとしているのだ。だが、その態度の方が疑わしい。
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