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奴隷の証明 2

「相馬鳴が桜さんの奴隷としてふさわしいのかどうか確かめるためです。中間テストの結果、彼は学年十位を修めました。これは僕たちが定めたぎりぎりの合格ラインです」 「おまえたちに奴隷を品定めしてもらう必要はない。もともと能力の低さを求めての奴隷選定だ」  ぎりぎり合格だの能力の低さだのと失礼極まりない。鳴はムッとして雪生の横顔を睨みつけた。 「桜さんがそうおっしゃることはわかっていました。でも、奴隷から外された僕たちとしては、たったひとりの低脳が奴隷では納得できません」  低脳て。優秀でこそないが低脳呼ばわりされるほどひどくはないつもりなのに。 「で、こいつにどうしろというんだ」  奴隷をやめろというなら喜んでやめてやる、と思ったが、ここまで悪し様に言われて素直にやめるのも面白くない。 「先ほども言った通り成績はぎりぎり合格です。が、僕たちが観察したところ運動能力は合格ラインから大きく外れています。運動能力も桜さんの奴隷にふさわしいと証明していただけませんか。もしも証明できなかった場合、彼を奴隷から下ろして、昨年度の奴隷を復活させてください」 「……いや、俺の運動能力はごくふつーなんですけど」  ぼそっと呟いた鳴の科白は全員に綺麗さっぱりスルーされた。 「運動能力か。一学期の体育で五を取れとでもいうのか?」 「そこまでは待てません。僕は武道大会に弓道で出場します。彼と弓道で勝負させてください。僕に勝つことができれば、僕たち元奴隷も彼が奴隷にふさわしいと認めます」  雪生は鳴に視線を向けた。感情の読めない眼差しだ。 「鳴、おまえ弓道の経験は?」 「あるわけないでしょ。この平々凡々純潔の庶民たる俺が弓道とか」  鳴がそう言うと、白石はゴミ虫を見るような眼差しを向けてきた。顔立ちの美しさだけじゃなく、視線の厳しさまで遊理に負けず劣らずだ。思わず肩が小さくなる。 「庶民というなら僕だって庶民だ。それなのに庶民を言いわけにして逃げるつもりか?」 「鳴、安心しろ。弓道なら俺が教えてやる」 「いや、だって大会まであと十日だよ!? 生徒会の仕事だってあるのに――」 「桜と相馬君の仕事はこっちで引き受けるよ」  太陽は右手を軽く上げながら発言した。 「ああまで言われて引き下がったんじゃ男がすたるってもんでしょ。桜の奴隷としてふさわしいって証明してあげなよ」 「……俺も手伝う」  ぼそっと呟いたのは無口極まるパンク少年、翼だ。鳴をじっと見つめてきたかと思うと、がんばれというように拳をぐっと握りしめる。  太陽の親切も翼の友情もありがたい。が、しかし、たった十日で弓道経験者に勝てとは無茶ぶりにもほどがある。 「話はこれで終わりだな」 「いや、ちょっと勝手に終わらせ――」 「わかりました。武道大会を楽しみにしています」  白石は挑戦的な目で鳴を睨むように見つめると、他の生徒たちと共に去っていった。

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