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罪と罰 4

 心身共に疲れ切った鳴は、ベッドに潜り込んで眠ろうとした。睡眠は最大の現実逃避だ。  それに目が覚めれば、尊大な生徒会長も奴隷に選ばれたことも何もかもが悪い夢で、いつもどおりの平和で平凡な生活にもどっているかもしれない。 「今から寮を案内してやる。さっさとベッドから出て、服と髪を整えろ」  雪生は容赦なく掛け布団を剥ぎ取った。 「……案内はいらない。今からお昼寝するから邪魔しないでいただきたい」 「子供か。三食はつけてやるが昼寝までつけてやるほど奴隷は甘くないぞ。罰がくだる前にベッドから出るんだな」  罰というのはキスのことだろう。あるいは鞭でしばかれるか四の字固めか。どれにせよごめんである。  鳴が渋々ベッドから出ると、雪生は手で鳴の髪や制服を整えてきた。 「みっともない格好でうろつくな。おまえの恥は主人である俺の恥だからな。心に命じておけ」  よし、雪生にものすごーく腹が立った時はパンツ一枚で寮を練り歩くことにしよう。恥ずかしい思いをするのは鳴も同じだが、死なば諸共だ。 「なにを考えてる?」  鳴の考えを見透かしたかのように、雪生は冷ややかな視線を向けてきた。 「別にー? 何も考えてないけどー?」  雪生は鳴の頬を思いきり抓ってきた。なにも言ってないし、してないのにひどい。  鳴はしかたなく雪生と共に部屋を出た。桜雪生がこの学園でどういった存在なのか、鳴はすぐに理解することになる。  雪生を見かけると、誰もがハッとした様子で頭を下げる。遠巻きに見つめる者、話しかけたそうに傍をうろつく者、実際に話しかけようとする者もいたが、 「今、受験組の奴隷に寮を案内中だ」  雪生はそれだけ言って、誰も相手にしようとしない。  鳴はと言えば「針のむしろ」という慣用句を身にしみて実感していた。じろじろと胡散臭げな視線を向けられるくらいならまだいい。妬みや嫉みがたっぷり含まれた視線や、殺意すら感じる視線をシャワーのごとく浴びさせられて、鳴は部屋に逃げ帰りたくてしかたなかった。 (この人、桜雪生って何者なんだろう)  生徒会長に選ばれるくらいだから頭は良いんだろう。上品そうな雰囲気から良家の子息だということも想像がつく。  でも、それだけでは崇拝の対象にはならない、と思う。   いくら優れていてもしょせんは同じ高校生だ。

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