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最初の晩餐 2
「どこへいくつもりだ」
「え、いや、俺はキングじゃないし」
正直言って雪生ひとりならまだしも、キングに囲まれて食事するのはごめんである。気疲れで食事を楽しむどころじゃない。
「テーブルは六人掛けだ。おまえひとり増えても問題ない」
「いや、でも」
「奴隷に拒否権があると思うな。素直についてこい」
雪生はさっさと歩いていってしまう。キングに囲まれて食事をするくらいなら、食堂の隅でみかん箱をテーブルにひとりで食べるほうがまだマシなのに。
「あの、他の奴隷さんたちは?」
「奴隷は基本的にキングと食事は共にしない。俺以外のキングは十人ずついるからな。大所帯になりすぎる」
「俺だけご一緒させていただくのは気が引けるんだけど……」
ただでさえ悪目立ちをしてるのだ。これ以上、目立つような真似はしたくない。
「俺がいいと言ってるんだ。おまえが気にする必要はない」
気にする必要はない、と言われても、敵意や侮蔑のこもった視線を気にせずにいられるほど鳴は剛胆にできていない。
しょうがなく雪生の後ろを歩いていくと、先ほど壇上で目にしたキングたちがひとつのテーブルについているのが見えた。
雪生に気がついたらしく、太陽が手を大きく振った。
「あれ、相馬君も一緒なんだ」
「ああ、俺の奴隷はひとりだけだから、一緒に食べても問題ないだろ」
太陽が答える前に遊理が口を開いた。
「奴隷が一緒のテーブルって正気? 奴隷を自惚れさせてどうするつもりだよ」
苛立ちを隠さない口調だった。冷ややかな目で一瞥されて、鳴は肩を竦めた。こうなるのが目に見えていたから、一緒のテーブルは嫌だと言ったのに。
理由はわからないが遊理は鳴を疎んじている。嫌われている相手に自ら近づくのは、相手からすれば嫌がらせに近いだろう。
「あのー、俺やっぱり他のテーブルにいきますね」
にっこりと愛想笑いをしてこの場から離れようと思ったのだが、雪生が腕を掴んできた。
「気に食わないなら俺と鳴は他のテーブルにいく」
「えっ!? いや、あんたがついてきたら意味がないでしょ」
「あんた!? 奴隷の分際でそんな口の利きかたが許されると思ってるのか?」
遊理は美しく整った顔に険しい表情を浮かべて、鳴を見据えた。怒った美形は仁王とは違った意味で迫力がある。鳴は震え上がった。
「え、えっと、雪生がついてきたら意味がないでしょ」
「あんた呼ばわりの次は呼び捨て? ずいぶんと出来のいい奴隷だね」
「俺がそう呼べと言ったんだ」
遊理は雪生の言葉に両目を見開いた。
遊理だけじゃない。面白そうな顔つきで事の成り行きをながめていた太陽と、我関せずといった様子で黙々と夕食を食べていた翼も、びっくりした顔で雪生を見つめた。
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