「十位以内に入らなかったときは、そうだな、罰として次の試験まで夕食抜きだな。俺が食べているのを隣に座ってながめていろ」 「はあっ！？　あんた、鬼ですか！　いやっ、鬼だってそんなひどいことしたりしない！　鬼以上の冷血極悪人だ！　犯罪者予備軍だ！」 　鳴は雪生を指差して罵ったが、雪生はやはり表情ひとつ変えなかった。 「安心しろ。おまえの独力で十位以内に入れるわけがないことくらい理解している。責任を持って俺が勉強をみてやる」 「安心！？　雪生、あんた安心の意味を辞書で調べたことあるのか？　歩く平均値のこの俺が学年十位以内とか、ちょっと勉強をみてもらったからって、無理に決まってるでしょ！」 「鳴」 　雪生は不敵な笑みを浮かべた。大抵の女なら、男ですらどぎまぎしてしまいそうな、微量の色気を含んだ笑みだ。 「おまえが馬鹿ならそんなことを命じたりしない。おまえはこの俺に選ばれた奴隷なんだ。もっと自信を持つといい」 「雪生……――って、俺を馬鹿だって断言したのあんたでしょーが！」 「なんだ、覚えていたのか。そこまで馬鹿じゃなかったんだな」 　鳴はギリギリと歯噛みしながら雪生を睨みつけた。 「いいか、鳴。奴隷が主人の命令に背くことは許されない。おまえにできるのは俺の命令に従うために、死にものぐるいで勉強を頑張ることだけだ」 「鬼！　悪魔！　鬼畜！　凶悪犯！　飢えて死んだら化けて出てやるからな！　毎晩毎晩、枕元に立ってお腹が鳴る音で安眠妨害してやる！」 「人間、夕食抜きくらいで死んだりしない。安心しろ」 　雪生はにこやかに微笑んだ。綺麗に笑う雪生が憎らしい。 　夕食を奢ってくれるなんて少しはいいところもあるんだ、と見直したばかりだったのに。 　しょせん目の前にいるのは傲慢で尊大で俺様極まりない生徒会長なのだ、と改めて思い知った。 　これ以上の抵抗はエネルギーの無駄だ。そう悟った鳴は風呂に入ることにした。 　寮の風呂は共同の大浴場だと聞いていたが、キングである雪生の部屋にはバスルームが備わっていた。 　バスルームに入った鳴は目を見張った。ラグジュアリーホテルさながらにお洒落で広い。 　シンプルかつ洒落た化粧洗面台。足が余裕で伸ばせる大きなバスタブ。呆れたことにジャグジーまでついている。 　キングたちの親がいくら寄付しているのかしらないが、学生寮でここまでする必要があるんだろうか。 　鳴は疑問を抱きながら風呂に入り、せっかくだからとジャグジーのスイッチを入れてみた。 「お、これはなかなか」 　疲れきった身と心にはなかなかの癒やしである。 「もうちょっと強く――って、わあああああ！」 　水流に身を取られた。気がついたときには全身をバスタブに呑みこまれていた。 　苦しい。息ができない。まさか入学一日目にして風呂場で死ぬハメななるなんて。 　母さん、父さん、じいちゃん、先立つ不幸をお許しください――