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ご主人様は友達がいない 3

「それはずばり! 友達が欲しかったからだ!」  鳴は雪生の鼻先に人差し指をびしっと突きつけた。  十四で大学を卒業したと聞いてピンときた。  十代前半で大学に入学したのなら、まだ幼い雪生はキャンパスで浮きまくっていたはずだ。友人のひとりもできなかったに違いない。  日本の高校に入り直して今度こそは友人を、と勢い込んだ雪生だったが、尊大過ぎる態度のせいで周囲から一線を引かれてしまい、やはり友人のひとりもできずにいるのだ。  昨日一日、雪生の隣で過ごしてわかったが、雪生を崇める生徒たちは掃いて捨てるほどいても、親しく振る舞う相手はひとりもいなかった。  同じ生徒会役員の太陽たちですら、雪生を下の名前ではなく「桜」と名字で呼んでいたし、雪生も彼らを名字で呼んでいた。昨日、出会ったばかりの鳴のことは「鳴」と呼び捨てるのに。  友達が欲しい。そうだ、友達になってくれそうな奴を奴隷に選ぼう。  そう考えた雪生は鳴を奴隷に指名した。  この平々凡々で人の良さそうな少年ならきっと友達になってくれる。そう信じて。  奴隷の鳴相手に「名前を呼び捨てしろ」「敬語を使うな」と命じたのも、鳴と友達になりたかったからだ。  謎はすべて解けた。 「ドヤ顔で俺を見るな」  雪生は鼻先に突きつけられた鳴の指を手の平で押し退けた。 「友達になって欲しかったんならなって欲しいって、素直に言えばよかったのにー」  鳴は生温かい眼差しで雪生を見つめながら、肩にぽんと手を置いた。奴隷になるのは真っ平ごめんだが、友達にならいくらでもなってあげるというものだ。 「いっ、たたたたたたた!」  思わず叫び声を上げたのは、雪生が手の甲を思いっきり抓ってきたからだ。 「ちょっ、皮が千切れる!」 「なーにが言えばかったのにーだ。盛大にハズレだ」  雪生は氷点下の眼差しを鳴に向けた。 「えっ!? いや、そんなはずは!」 「俺がハズレと言ってるんだからハズレだ。だいたいおまえみたいなマヌケに友人になってもらわなくても、友人くらいちゃんといる」 「またまたー、見栄張っちゃってー」 「おまえは一度、鞭で躾けたほうがよさそうだな」  雪生の眼差しの温度がますます下がった。  雪生なら本気でやりかねないところが恐ろしい。 「回答権はあと二回だな。有効に使えよ。まあ、マヌケには無理かもしれないが」  マヌケを奴隷に選んだ自分はマヌケじゃないのか、と言ってやりたかったが、言おうものなら間違いなく鞭でしばかれるだろう。鳴はお口にチャックした。

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