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青いノートの秘密 2

「待たせてすまない」  すでに雪生以外のキングは全員そろっている。テーブルの奥側に太陽、翼、遊理が座り、その背後にはそれぞれ三人の生徒たちが立っている。その他にも鳴の知らない顔が十数名ほど、椅子に腰を下ろして生徒会長の登場を待っていた。  雪生に続いて入っていくと、あちらこちらから視線が飛んできた。好奇心に溢れた視線、値踏みするような視線、見下すような視線。敵意に溢れた視線がないだけマシだと思おう。 「鳴、おまえは俺の後ろに立っていろ」  雪生はそう命じると、テーブルの最奥の椅子に腰を下ろした。いわゆる誕生日席だ。命じられたまま、雪生の背後に立つ。 「では、今から今年度の初会議をおこなう。まずは自己紹介からいくか。見知った顔も多いが、初めて役員になった人たちもいるからな。如月から時計回りに自己紹介していってくれ」 「了解。じゃあ、僕から自己紹介させてもらうね」  雪生の斜め向かいに座っていた遊理は、ひとつうなずいてから立ち上がった。  自己紹介はスムーズに進んでいく。  キングたちの後ろに立っているのが奴隷に選ばれた生徒だと、自己紹介を聞いてわかった。  奴隷に選ばれたというのに誰もが誇らしげな顔をしている。鳴にはまったくもって理解できない心情だ。  生徒会執行部はキングたち四人を中心に、会計、書記、庶務がそれぞれふたり、更に風紀委員長を始めとする各委員長たちで構成されているのがわかった。 「昨年度に引き続き今年度も生徒会長を務めることになった桜雪生だ。昨年度はいじめの撲滅を目標にしていたが、目標を達成できたとは言いがたい。今年度こそ強者による弱者への心身への暴力を完全になくしたいと思っている。そのための協力を仰ぎたい」 (へー、金持ち学校でもいじめってあるんだ。そういえば、さっきは俺もいじめ、っていうか袋叩きにされるところだったっけ。……っていうか、強者による弱者への心身への暴力って、あんたが俺にしてることじゃないの!?) 「鳴、最後はおまえの番だ。……なんだ、その反抗的な目は」 「べっつにー」 「なにか知らないが、ふくれてないでさっさと自己紹介しろ」  鳴は全員の視線が注がれていることに気がついてハッとした。 「え、えーっと、ただいまご紹介に預かりました相馬鳴です」 「誰がいつおまえを紹介した」 「……ご紹介にはあずかっていない相馬鳴です。一年生です。趣味はB級グルメの食べ歩きです。彼女は常時募集中です。お年頃の妹さん、お姉さん、従姉妹さんがいらっしゃいましたらひと声おかけください。……えーっと、色々とわからないことだらけでご迷惑をおかけするかもしれませんが、これからよろしくお願いいたします」  途中からなにを口走っているのかわからなくなってきたが、鳴は誤魔化すように深々と頭を下げた。 「こちらこそこれからよろしく、相馬君」  明るく爽やかに応じてくれたのは書記長の太陽だ。  歩く校舎は敵ばかりのこの学園において、鳴に対して一切の敵意を向けない貴重な人材である。 「……よろしく」  ぼそっと呟いたのは太陽の隣に座っている会計長の翼だ。鳴と目が合うと、こくりとうなずく。  無口で無表情な少年だが、どうやら鳴のことを悪くは思っていないようだ。

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