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太陽はかく語りき 2
「それがどうして奴隷やキングなんて呼ばれるようになったんですか?」
鳴が不思議に思って訊ねると、太陽は男らしい顔に苦いものを浮かべた。
「七年前に生徒会長に選ばれた男が最悪だった。仮にNとしておこうかな。Nは成績もよく、ありとあらゆるスポーツに長けていた。父方の家系は代々続く政治家で、家柄も申し分なかった。……ただ性根が腐っていた」
七年前の生徒会長なんて太陽だって面識がないだろうに。まるで見てきたように語る。
鳴のささやかな疑問に気づいたのか、
「俺の兄もここの卒業生なんだよ。俺が春夏冬に入学することが決まると、生徒会には気をつけろと言って、Nのことを話してくれたよ」
「そのNさんって人がパーティーから奴隷に呼び名を変えたんですか。キングっていうのもその人がつけたんですね」
「呼び名を変えるだけならよかったんだけどね。扱いもがらっと変わったらしい。それまでは対等だった関係が、文字通り奴隷として扱われるようになった、と兄が言っていたよ。庶民と良家というカテゴリーができたのもこのころだ。さすがに良家の子息の中から奴隷を選ぶわけにはいかないからね」
「誰か咎める人はいなかったんですか? 先生とか他の生徒会の人とか」
「Nはそうとう上手くやっていたみたいだよ。教師の中に気づく人はいなかったらしい。気づいても見てみぬ振りをしていたのかもしれないけどね。Nの権力はそれくらい絶大だったそうだ。ああ、他の生徒会役員? 他の役員は会長が選ぶんだよ。つまり生徒会はNの取り巻きで構成されていたっていうこと」
鳴ははーっと溜息を吐いた。お金持ち学校にはお金持ち学校の闇があるようだ。
「Nが卒業してからも悪しき慣習は残った。俺が高等部に上がったときもひどいものだったよ。ようやく改善されたのは去年、桜が会長に就いてからだよ」
朝人の話を思い出す。キングは憧れではなく恐怖の対象だったと言っていた。桜が会長になって変わったのだと。
「会長の俺に対する扱いってけっこうひどいんですけど。前はもっとひどかったんですか」
「機嫌が悪いと憂さ晴らしに殴ったり、全裸で寮内を歩かせたり、まあ、立場を利用したいじめだね。……もっとひどいことには性的暴力もあったらしい」
太陽の眼差しに暗い光が宿った。
「えっと、キスされたり股間を揉まれたりとかですか?」
「無理やりフェラをさせたり、レイプしたり、だよ。あくまでも噂だけどね」
鳴は絶句した。そんなことがまかり通っていいはずないのに。
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