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太陽はかく語りき 3

「誰も訴えなかったんですか!? そんな無茶苦茶なことされて、奴隷だからって我慢したんですか?」  鳴は基本的に事なかれ主義だ。人と争うのは大の苦手で、喧嘩になるくらいなら大抵は折れてしまう。  しかし、自分の周囲でそこまで無法なことが起こっていたら、さすがに物申すくらいの気概は持ちあわせているつもりだ。 「この学園の生徒は、庶民といっても親が会社の経営者だったりするんだよ。相馬君だってそうだろう?」 「あ、うちは父はしがないサラリーマンですけど、祖父が小さな工場を経営してます」 「訴えたらお祖父さんの工場を潰す。そう言われたら? 実際、生徒会長に選ばれる生徒の親はそれくらいの権力は持ってるんだよ」  鳴は言葉を失った。ふつふつと怒りが湧き上がる。 「それでも俺は戦いますよ。祖父だって俺と一緒に戦ってくれるはずです。そんな無法な行為をなかったことにするなんて、暴力を許すのと同じです!」  怒鳴ってからハッとする。太陽に怒鳴っても意味がないのに。 「……すみません。大きな声を出したりして」  太陽は驚いたように目を丸くしていたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。 「意外だな。相馬君って熱いタイプなんだね。もっとおっとりした性格だと思ってたよ」 「や、俺は根っからの事なかれ主義です。第二の座右の銘は長い物には巻かれろですから」  ただそんな自分にもどうしても許せないことがある、というだけで。 「今はそんな横暴な行為は行われていないから安心して」  いや、キスされまくったり股間を揉まれたり、けっこういろいろされてるんですけど、と心で呟く。どうしても許せないかと問われたらそこまででもないので、訴えるつもりはないが。 「話が逸れちゃったね。桜が相馬君を奴隷に選んだ理由が聞きたいんだったね」 「そう、それです! お願いします!」  鳴は立ち上がって深々と礼をした。  太陽から話を聞けば、自分が奴隷に選ばれた理由がわかるかもしれない。理由がわからないままだと気になって夜も七時間半しか眠れない。 「相馬君ってすごーく普通だよね。ほんとに普通。俺は、桜は相馬君のそういうところが気に入ったのかなって思ったんだよ」 「はあ、確かに俺は平凡オブ平凡ですけど」  非凡過ぎる雪生には平凡さがもの珍しく映った、ということだろうか。 「違う違う。平凡っていう意味じゃないよ」  太陽は笑って否定すると言葉を続けた。 「桜や俺たちキングに対する態度が普通ってこと」 「……?」  鳴は太陽の言う普通の意味がよくわからなかった。頭の上に大きくクエスチョンマークを浮かべる。

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