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太陽はかく語りき 4
「なんて言ったらいいのかな。俺たちに対する態度とクラスメートやただの先輩に対する態度、相馬君は同じでしょ」
太陽の言葉にドキリとする。
「え、ま、まずかったですか? あのいちおう敬語には気をつけているつもりなんですけど……。雪生にタメ口なのはそう命じられたからで」
「キング相手の態度は概ね三パターンに分かれるんだ。崇拝するあまり必要以上にへりくだったり媚を売ってくる人、虚勢を張って対等の立場になろうとする人、キングを見下して上の立場に立とうとする人」
太陽は言葉を切ると、鳴ににこりと微笑みかけた。
「相馬君はそのどれにも当てはまらない。なんて言うか普通なんだよね。気後れも虚勢もない。ほんっと普通。桜に対しても少しも気後れしてないでしょ? まあ、相馬君は受験組だからっていうのもあるだろうけど、桜の家柄を知ったら大抵の人間は引くか構えるか媚を売るかだよ」
「あの人の家ってそんなにすごいんですか?」
素朴な疑問だったのに、太陽はぎょっとしたように目を見開いた。
「え、まさか知らないの?」
「知りません。三日前に知り合ったばかりだし」
「いや、普通は気になるでしょ。本人か誰かに訊こうと思わなかったの?」
相当な金持ちらしいということは薄々わかっていた。学園に多額の寄付をしているようだし、着ているものもいちいち高級そうだから。
「はあ……親のこととか関係なくないですか? 親が偉いからってその子供まで偉いわけじゃないし」
あれ、と思った。
(今の科白、どこかで聞いたことがあるような……)
どこで聞いたんだったっけ。思い出せそうで思い出せない。もどかしくて気持ちが悪い。
「はは、まあ正論だけどね。ひょっとして相馬君ってけっこうな大物なのかもしれないね」
太陽はなぜか苦笑している。おかしなことを言ったつもりはないのに。
「会長ってそんなにすごい家柄なんですか?」
「桜って名字でピンとこない? 桜はSAKURAグループの御曹司だよ」
「SAKURAグループって、航空会社でお高いホテルも経営してるSAKURAグループですか?」
「そうだよ、そのSAKURAグループ」
「へー、そうなんだー」
「へー、そうなんだーって」
太陽の苦笑が本格的な笑いに変わった。『へー、そうなんだー』はギャグでもなんでもないのに。
他人の笑いのツボはわからない。鳴はしみじみ思った。
「ま、だから、相馬君のそういうところが気に入って奴隷に選んだのかな、って思ったんだ。桜雪生を桜雪生とも思わないようなところが。でも、この推測には大きな欠点がある」
「欠点?」
「俺の推測が正しいなら、桜は以前から相馬君を知っていたことになる。でも、そういうわけじゃないんだろ?」
「まっっったくの初対面です」
「前にどこかで会っていた、ってことは……ないか」
鳴はうなずいた。雪生みたいな人間、一度会ったら絶対に忘れるはずがない。見た目だけでもかなりのインパクトなのに、中身ときたらある意味トラウマ級だ。
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