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夜食狂想曲 4

 テーブルがしん…と静まりかえる。  遊理はムスッとした顔で押し黙り、太陽は面白そうに雪生を見つめ、翼は残り数本になったスパゲッティをフォークに巻き取ろうと格闘している。 「……言いすぎたよ」  遊理は忌々しげな溜息と共に吐き出した。 「奴隷をルームメイトにするのに反対するあまり言葉が過ぎた。ごめん」  遊理の言葉はすべて雪生に向けたものだ。鳴のことは見ようともしない。まあいいけど。 「でも、僕がルームメイトに反対する気持ちは変わらないよ。キングがルームメイトを持つなんてリスクが高すぎる。ルームメイトが欲しいならキング同士でルームメイトになるべきだ。いくら桜が強くても寝ている間はどうしたって無防備じゃないか。破廉恥な行為をされたり、いかがわしい写真を撮られたり……。そんなことをされたらどうするんだ。桜の寝顔や湯上がり姿を見られてるだけでも嫌なのに」 「……そんなことするわけないでしょ」  鳴は思わず呟いた。  遊理は鳴へ目を向けると、嘲笑うように鼻で笑った。 「そんな自己申告は無意味だね。寝てる桜にいやらしい行為をしています、なんて正直に言う奴がいるわけないんだから」 「あのー、この人、男ですよ? やらしーことしたって、俺はなんにも楽しくないんですけど」 「普通の男が相手ならね。でも、相手は桜だ」  まあ、確かに色気を感じさせる少年ではある。が、どこからどう見てもあまねく男だ。  そういえば雪生は前会長とその手下に襲われそうになったんだった。  未遂で終わったらしいが、いくら傲岸不遜な雪生だって男に集団で襲いかかられたのは少なからずショックだったはずだ。下手をしたらトラウマになってるかもしれない。  男が男を、などと言う話、雪生の前でしないほうがいいのでは。 「桜相手におかしな気持ちになったことがないとは言わせないよ」 「そんなこと言われてもないものはないとしか」 「嘘を吐くなよ。桜の寝顔にキスしたり、湯上がりを隠し撮りしたり、残り湯を飲んだり、ベッドの匂いを嗅いだり、絶対にしてるはずだ」  鳴はだんだんげんなりしてきた。  ひょっとして遊理がいま挙げたことは遊理が雪生相手にしたいことなんじゃないだろうか。 「それじゃただの変態じゃないですか。キスしたかったら起きてるときにするし、匂いも嗅ぎたかったら直接本人を嗅ぎますよ」  キスしたいと思うことも匂いを嗅ぎたくなることもないけれど、と心でつけ加える。 「……は? おまえ、桜にそんなことをしてるのか?」  ドスの効いた声にハッとする。  遊理の目は完全に据わっている。

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