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夜食狂想曲 18

(クラゲとタコて)  えらい表現である。女子に対する悪意と敵意すら感じる。  ひょっとして遊理は女嫌いなんだろうか。下手なアイドル、いや、上等なアイドルより容姿端麗だと女子という生き物を必要としないのかもしれない。  女嫌いでボーイズラブ好きなら、ボーイズラブの登場人物ばりに美形な雪生を異常に気に入っているのも納得できる。  メイド喫茶を親の敵のごとく憎んでいたのもうなずける。 「桜もきちんと読めばBLの魅力がわかるはずだよ。わからないはずがないよ。だって、桜なんだから。その三冊を読み終わったら、僕が神作品を何冊かチョイスするから、それを読んでみてよ。間違いなく沼にハマるから。ああ、嬉しいなあ! まさかこんな身近に同好の士がいるなんて思いもしなかったよ」 (なんか勝手に腐男子仲間にされちゃってるけどいいのかな)  雪生は特に文句を言うでもなく、冷淡にも見える無表情で遊理の話に耳を傾けている。 「BLとひと言で言ってもジャンルの中身は多彩なんだよ。学園モノからリーマンモノ、異世界トリップ、オメガバース、アラブ、ヤクザ、獣人……数え上げればキリがない」  遊理のマシンガンBLトークもキリがなさそうだ。  鳴はそっと目を逸らすと、目の前の食事に専念することにした。  人の趣味にケチをつけるつもりはない。男がボーイズラブを好きだって全然かまわないと思う。  が、しかし、隣の女子に鳴が主人公のボーイズラブ小説を書かれたことのある身としては、あまり楽しい話題でもない。 「相馬君は秋葉原でなにも買わなかったの?」  太陽が訊いてきた。丼の中身は半分ほどに減っている。 「俺は炊飯器を買いました」 「炊飯器?」 「キングの部屋には小さいけどキッチンがついてるじゃないですか。炊飯器があれば夜食におにぎりが作れるなって」 「ああ、なるほど」  すでに米は洗って砥いである。タイマーもセット済みだ。あとは炊き上がったあつあつごはんを「あちあち!」と呟きながら握るのみ。 「夜食におにぎりなんて羨ましいな。相馬君、俺のぶんも握ってくれない? もちろん材料費は払うから」  太陽は人懐こそうな笑みを向けてきた。おにぎりを握るくらいたいした手間もかからない。 「いいで――」 「ダメだ」  鳴がオーケーするより早く、雪生が却下した。  遊理のマシンガンボーイズラブトークに聞き入っていると思っていたのに。鳴たちの会話も耳の端で聞いていたらしい。 「一ノ瀬、俺の炊飯器と奴隷を勝手に使用するな」  雪生は冷ややかに言い放った。

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