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夜食狂想曲 26
「な、なに――」
腰がシンクにごりっと当たった。ちょっと! 痛いんだけど! 喉元まで出かかった文句は呑みこんだ。呑みこまされた、と言うべきか。
要するに雪生が口を口で塞いできたのだ。
逃げようとしても背後はシンクだ。正面には雪生。カニのように左右に逃げれば、と思ったが、肩を掴んでいる指が緩む気配はない。
気がつけば肩だけじゃなく、膝で足を押さえつけられている。両手を突っ張ろうとしてみても、雪生の身体は巨木のように揺るがない。
筋力の差が恨めしい。
「ん、ん、んーーーーッ!」
口を塞がれた状態で精一杯の文句を言ったが、それでやめてくれるようなご主人様なら苦労はしないというものだ。
舌に舌が触れた。びくっとして狭い口内で精一杯舌を引っこめる。それを追うようにして舌の裏側を舐められて、おかしな声が出そうになった。
雪生にキスされててよかった。じゃなかったらあらぬ声が出てしまっていたところだ。
(いやいやいや! そもそもキスされてなかったらあらぬ声も出てないから!)
鳴がセルフツッコミを入れている間に、雪生はいったん唇を離し、ふたたび重ねてきた。
なんだかちょっとまずいかもしれない。
唇を甘咬みされたり、舌を絡め取るように舐められるのは、少し気持ちがいいかも……いや、正直に言うとものすごーく気持ちがいい。
鳴は下半身に血液が集まるのを感じた。
前に雪生にべろちゅーされたときも、下半身は素直に反応してしまった。
相手は男なのにいくら童貞だからって見境がなさすぎやしないか?
(だって気持ちいいんだからしかたないでしょ!)
開き直ってる場合じゃない。雪生に気づかれたら最悪だ。
どうにかして鎮めないと、と思った瞬間――
「ぎゃーーーーッ!」
雪生の手に股間をむにっと掴まれて、鳴は盛大な悲鳴を上げた。
「おまえはすぐ勃つんだな。過敏症か?」
「雪生がエロいキスするからでしょ! 健全な青少年の健全な反応だよ! ていうか、なんでいきなりこーゆーことするんだよ!」
鳴は股間を抑えながら真っ赤な顔で怒鳴った。
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