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第4話

今思えば、話したのはイケメンだとかイケボだとか頑張れって励まされたりしたあの時だけだったんなんだよな。 廊下ですれ違ったり、体育が一緒だったりだけで接点なんてなにもなかった。 だけどいつも目が合えば微笑んでくれる。その柔らかな雰囲気にまた絆されて放課後ここでグランドを見つめる羽目になる。 それも今日で終わり。グランドには誰もいなくて今日でこの教室に来ることもない。 みんなそれぞれの道に枝分かれする分岐点に出会った偶然。 でも知り合った事を偶然なんて思いたくない。風化していく思い出になんてしたくないんだ。 卒業式が終わり最後のホームルームも終わって教室には僕一人だけになった。ここから離れがたくてこうやって最後まで残ってしまった。 明日になれば君はどこかで誰かに微笑んで生きていく。僕の知らない場所で知らない人達と新しい生活が始まっていくんだよな。 そう思えばこの想いを終わらせるきっかけがあっても良かったのかもしれない。 もう少し近付いていれば?仲良くなれる行動を取っていれば、何かが変わって僕の未来に君がいたのかもしれないなんて後悔はしてる。 同性同士でどうしろっていうんだ。未知の世界過ぎて告白なんて怖すぎる。 ブンブンと頭を振り色んな想いを飛ばしたくて窓を開けてみた。 ひんやりとした風が髪を梳いていく。少し春の匂いを含んで、もうすぐ分厚いコートも要らなくなる。 季節が変わっていく。 春の気配が心に錘をつけるように重くしていく気がした。 …その時。 「帰んないの?」 もう学校には卒業生は誰もいないと勝手に決めつけていた僕はビクッと身体を揺らして振り向いた。

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