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第5話
ドア越しにもたれ掛かっていた君が一歩ずつ近付いてくる。
その一歩が僕の心臓をバクバクと鳴らせ、爆発しそうな鼓動に胸を押さえた。
僕の横に立ち外を眺める。冷たい風なのに君の触れる風は違うもののように感じた。
「よく見えるね、ここ」
グランドを見て僕を見る。何故かそれが攻められているようで俯いた。こっそり覗いていた罪悪感からなのか。
「うちの部でさ、結構有名だったんだよ。ここからイケメンが見てるってね」
え?
「誰見てるんだろ〜って女共が騒いでた。俺も…誰を見てるんだって思ってたんだ」
真正面から俺を見据えてにっこり笑う。
その顔はダメ。絆されるダメなやつ。それに絆されて諦めきれずこうやってここに残ってるんだよ。
「風見はさ、好きなヤツいたんだろ、グランドに」
僕の返事を待つ風見君はどかっと僕の前に座る。そのまま自分の席に座って膝で拳を作った。
まるで尋問のようになる。
「…いたよ…ずっと見てた」
核心は言わないし、言えない。だけどいたのは確かで目の前にいる人だ。
「やっぱりな、それで上手くいった?そいつと」
「…いや…」
「まさか…告ってないとか?」
「…うん」
「マジで?いつもイケメン垂れ流してるクセに…損してるな、お前」
垂れ流してなんかいないし損もしていない。むしろここから毎日見れて、今こうして目の前にいてくれるんだから得してると思う。
誰も俺の外見だけで本当の僕を知ろうとしない。上っ面だけだ。だから僕自身が好きになった人としか付き合いたくない。それは致命的な同性が好きという性。
だからずっと見ているだけで良かった。なのに僕を見て微笑んだりする君が悪い。
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