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第5話

巴弥天は、太平の言葉に唇をキュッと噛んで目を伏せて額を掌で覆った。 「信じたいけど……。俺は嫉妬深いから、浮気とかされたら何をするかわからねえ。僧侶になるのに、業が深くて.....だから、今のうちに諦めれば、まだ……高校生活の思い出で、綺麗なままとっておける」 掌の隙間から、つうっと涙の筋が零れ出す。 「そりゃ、俺だって将来のことなんかわかんねえけど。でも好きなまま別れたら、辛くて後悔でどうにかなっちまう。未来永劫とか言えればいいけど.....。なあ、どうすりゃ信じてくれるんだ」 少なくともこんな山の中の高校生活に絶望していた太平を救ってくれたのは、巴弥天である。 掌の上に啄むように唇を何度も落として、硬い黒髪を指先で撫でる。 「.........いいの.....に」 微かに掠れた声が響いて、太平はじっと巴弥天を見下ろす。 「.....なに?」 「このまま、卒業なんかしないで、時間が止まればいいのにって.....」 手が伸ばされ、肩を掴まれると巴弥天は太平の背中に腕を回してぐいっと強く引き寄せた。 「俺は.....変わらねえって.....。ハヤテ、信じてよ」 「ごめん」 首を振って巴弥天は中途半端に乱れた制服のシャツを剥がすように、自ら脱いで腕を太平の首へと絡める。 「信じることはできないけど.....」 誘うように顔をあげて、唇へと舌を這わせる。 「お前を失っても、餓鬼道へ堕ちる決心がついた」 嫉妬に狂い死した者が堕ちる地獄にでも行けるという巴弥天の熱い視線を受けて、太平はぷっと噴き出す。 「相変わらず、言うことが中二病くせえ。いいよ、死んだらソコにも一緒に行ってやるから」 「一緒なら、そこも天国になっちまう」 太平は当てられた舌に唇で吸い付いて、しなやかな背中をゆっくりと撫でると、カチカチとベルトを外す。 「.....この先になにがあるかは、わからねえけど。つるつるでも、なんでもお前なら好きだし、袈裟姿とか想像すると.....なんか興奮するし」 「バカ.....」 柔らかい茶色の太平の髪をぐしゃりと撫でると、巴弥天はパンツと下着を降ろして腰を押し付ける。 「今の俺にも、興奮しろよ」

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