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彼の未来のために
彼はやると言ったらやる男
つまり、絶対家の前で待っている
例え今日がかなりの猛暑日だとしてもだ
正直帰りたくないけど、熱中症なんかになられたら困るしなあ…
そう思って急いで帰るとやはり家の前には彼の姿が
「いるだろうなとは思ってたけど、せめて近くのお店に入るとか何かしなよ
こんな所にいたら熱中症で倒れるよ」
「だって、こうでもして捕まえないと、先生俺から逃げるでしょ」
ちゃんと話し合いたかったのだと言う彼の目は真剣で、少し逃げ出したくなる
でもそれは出来ないので、家の鍵を開け彼を招き入れた
お茶を淹れながら、彼が何を話しに来たのかを考える
考えても分かるわけではないけれど、真剣な目をしていたから、何か深刻な話なのだろう
いっそ、僕から身を引くか…
彼はこれから受験勉強に集中しなければならないのだ
僕なんかに構っている暇などない
僕が、彼の邪魔になる訳にはいかないのだ
それに、いつか彼が現実を見て、彼から別れを告げられるくらいなら、僕から離れた方が少しは気が楽だ
なんて事を考えながら、淹れたお茶を持って彼の向かい側に座る
お互いにお茶を飲んで、少しの間が空いた後、先程考えたことを実行しようと口を開く
「…ねえ、僕達、別れましょうか」
そう告げて彼の目を見ると、そう意外でも無さそうで
ああ…もしかして、彼も別れを告げに来たのかな…?
彼は優しいから、きっと別れたいと思っていても、すぐに言い出せなかったのだと、どんどん気分が落ちていく心を叱咤しながら僕は言葉を続ける
「他に、好きな人が出来たんです」
本当は思ってもいないこと
きっと、本当の理由を言ったところで、彼は優しいから否定してくれるだろう
先生は邪魔なんかじゃないと
だから、彼に嘘をつく
でも、彼のためにも言わなければならないのだ
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