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彼が想うこと

すると彼は、突然不敵に微笑んで 「俺は…樹さんのこと、愛してるよ」 なんて、僕の背中に手を回し返しながら、耳もとで言うものだから、僕の頬がとても熱い 「樹さんって、授業の時以外だと基本タメ口だけど、焦ったり嘘をつくときは敬語になるんだよね だから嘘ついてるって丸わかりだったからそんなに心配してなかったんだけど」 …全て、バレていたのだ…その上でわざと落ち込んだような表情をして、僕からさっきの言葉を引き出した 今の晴れ晴れとした顔を見ればわかる しかし、ではあの約7ヵ月間の彼の態度は何だったのだろうか 僕の気持ちが分かっていたなら、本気であそこまで距離を取らなくてもよかったのではないのか 「…でも本当に、今日まで君は素っ気なくて…」 そんなにすぐに諦められるのかと寂しかったと、自分から別れを告げた癖に自分でも面倒臭いことを言っているとは分かっているが、言ってしまう 「それは…先生が変な事考えて、俺のために、なんて余計なお世話しようとしてるみたいだったから、少しお仕置きとして距離を取ってみたんだけど…」 少し言い淀んだ後 「…でも、本当は先生を見かける度に話しかけたかった 合格を知って喜んでくれてる先生見たら、すぐにでも恋人に戻りたいって言いそうだったけど、今日まではお互いのためにも言わないって決めてたからね…寂しかったよ?」 そう、少し照れたように言う彼の目は僕の目をしっかり見ていて、今度は本当の事を言っているみたいだ 「…っもう、本当に君はずるいですよ…」 「あははっでも、嘘でも別れたいなんて、もう言わないでね? 嘘だと分かってても、あれを聞くまで確信は出来なかったし、俺でもちょっとは傷つくんだから」

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