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第4話

僕は誰もいなくなった剣道部部室に倒れていた。 ほ、本当に、あの二人は悪魔だ…。 代わる代わる、何度も上からも下からも犯して…もう体も真っ白、頭の中も真っ白だ。 腰、立つかなぁ…? なんとか体を拭いて、服をかき集めて、着替える。 部室を這うようにして出る。 部室棟に誰もいなくてよかった…。紫音くん探すのは後にして、まずシャワー浴びよ…このままだと臭いもすごそうだし。紫音くんにも怒られそうだ…。 シャワーを探し求めていると、水泳部が使っている屋内プールが目に入った。 さすがにプールには誰もいないだろうと思って、そっと忍び込んだ。 案の定、誰もおらず、シャワールームのベンチで服を脱ぐ。 どうして、あの三人は僕で遊ぶのが好きなんだろう。結局三年間、この卒業という記念すべき最後の1日でさえ、玩具のように遊ばれてしまった。 まぁ、そんなの昔からなんだけどさ。 ズボンを脱いだ瞬間、屋内プールに続くドアが開いた。 「え?ももちゃん先生?」 「あ…、涼くん…」 水泳で鍛えられた上半身は細身ながらしっかり筋肉がついており、思わず見とれてしまうくらいだ。 黒髪の爽やか青年、青井 涼(あおい りょう)くんが立っていた。 彼も生徒会役員の一人で部活統括を任されていた。 僕は、涼くんのことを生徒会の「良心」と呼んでいた。 涼くんはこの学園では珍しい特待生として入ってきた、一般家庭で育った生徒なのだ。 初めは、特待生という身分を珍しがったり、庶民だとバカにしたりする生徒もいた。 でも、涼くんの人懐っこい、嫌みのない優しい性格が皆の毒気を抜いたのか、あれよあれよという間に人気者になっていったのだ。 昔、涼くんと話をしたときのことを思い出した。 どうして、花森学園に来ようと思ったのか?という話をしたときだった。 『俺さ、女手一つで母さんに育てられて、中学卒業したら働こうと思ってたんだ。 水泳の市の大会で優勝したときに、たまたまここの理事長がいて、特待生制度を使わないかって誘われたんだ。 もちろん理事長にもさっきの話はしたんだけど、中卒では働くのは難しいって言われて、せめて高校は出なさいって。 特待生制度だと学費免除だから、そこが大きかったな』 ひねくれもせず、真っ直ぐな瞳で話してくれた涼くんをなんだか眩しく感じた。 「ももちゃん、何でシャワールームに?」 涼くんはこてんと首を傾けた。 うう…三人に犯されて、どろどろになった体を洗いに来ましたとは…言えないっ!! 「そ、そういう、涼くんはなんでプールに…?」 話を全力でそらしてみる。 「俺は、もうこのプールで泳ぐのも最後だから、最後の一泳ぎしに来た」 「そ、そうなんだ…」 「……ももちゃん、もしかして…」 涼くんは何かに気がついたように、僕の腕をつかんで、シャワールームの一室に引き込んだ。 ここのシャワールームは立派だ。 普通プールのシャワールームってカーテンなのだが、しっかりとしたドアで鍵もついていた。 涼くんはカチリと鍵を閉めて、僕をぎゅっと抱き締めてきた。 「ももちゃん…またあの三人にイタズラされたの…?」 「え、イタズラって…」 「だって、臭うもん」 う…やっぱり臭うんだ…。そりゃそうだよねあんだけヤられたら分かるよね…。 「ももちゃん…優しいから言えないのかもしれないけど、嫌なら嫌って言わなきゃダメだよ」 およそ10才年下の生徒に注意される僕って…。 「ご、ごめんね…涼くん…情けない先生で…」 涼くんの抱き締める腕に力が更に入る。 「俺、三年間生徒会入ってて、ももちゃんが生徒会の先生で良かった。ももちゃん、押しが弱いけど、優しくて…皆のこと、よく見てて…紫音以外の三人はももちゃんのこと、玩具みたいに扱ってたけど、俺は…俺は…ももちゃんのこと…」 涼くんは一旦体を離して、あの真っ直ぐな瞳で僕を貫いた。 「好きだよ」

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