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第11話
500万円の借金を肩代わりしてもらう代わりに紫音くんの恋人(三年間限定)になったわけですが、今日の卒業をもって、その約束も終わった。
「紫音くん、今日までありがとう。色々あったけど、楽しかったよ」
本当に色々あった…。主に生徒会だけど。
特にあの三人(黄央くん、白馬くん、浪くん)に弄ばれ、大変だったけど、何とか乗り切った。
「もも、あの三人の相手は大変だったでしょ。あの三人は中等部の頃から問題児だったから、高等部で問題起こさないか心配だったんだ」
「何となく分かるよ…」
「だから、ももがあいつらにイタズラされてるの嫌だった」
紫音くんは僕をきつく抱き締めた。
「ちゃんと守ってあげられなくてごめんね」
「大丈夫だよ…ああいう扱いは慣れてるし」
僕は笑いながらそう言った。
そうだ。DV男と付き合ってた時なんて、毎日殴られてたし、ギャンブル依存症男なんて、毎日来ては財布からお金を抜き取っていた。
「それに、紫音くんも僕の写真買ってたんでしょ?知らなかったよ」
写真とは黄央くんが撮った、僕の恥ずかしい写真のことである。
「あーあれは、いつも俺のロッカーに入れられてて…『他の生徒にも売ろうかな』とか言われたから全部買い取ってたんだよ」
「え!?全部って、あれを全部!?三年間!?」
「もちろん。恋人の恥ずかしい写真なんて、他の奴等には見せられないよ。…涼は買ってたみたいだけどね」
相変わらず爽やかな笑顔でさらりとすごいことを言ってのける。
そういえば、黄央くんは紫音くんと僕の関係を知ってた。それも関係あるのかな?
「ねぇ…紫音くん、黄央くんって僕らの関係、知ってるんだよね?」
「涼以外の生徒会の役員会は知ってるよ」
「え!?」
「あいつらは中等部時代、結構めちゃくちゃなことしてたから…もものことも傷つけるんじゃないかと思って、一応牽制の意味を込めて」
めちゃくちゃ恥ずかしいことはされたけど…。確かに暴力や表だった誹謗中傷はなかったな。
「それに、あいつらは自分の家柄が俺の家柄より低いことを知ってるから、俺や、ももにも脅しとかはなかったでしょ?」
「なかった…」
エッチなことは散々されたけど。
紫音くんは僕の頬を両手で包んだ。
「ねぇ、もも。俺にも思い出くれる?」
言わんとしていることはわかった。
「うん…いいよ」
これで、紫音くんと触れあえるのも最後…。
そう思うと胸の中がちくりと痛くなった。
生徒会室の奥、本棚を動かすと秘密の部屋がある。
内装はあのバーと同じ、モノクロの壁紙に、白を基調とした家具。大きなベッド。
僕らが初めて体を重ねたあの部屋に似せている…というより全く同じだ。
ここで、僕らはいつもセックスをしていた。
紫音くんはベッドに僕を押し倒した。
「あれから3年ちょっと経ったなんて、信じられないな」
紫音くんは僕のネクタイをするりと外しながら、そう呟いた。
「紫音くん、背もすごく高くなったよね。高校に入ってからかな…たけのこみたいに」
「たけのこって…」と紫音くんは僕の冗談にクスクス笑いながら、僕の首筋に顔を埋めた。
金色の髪とアメジストのような紫色の瞳はいつまでも変わらない。
ワイシャツのボタンを外し、ワイシャツを脱がされた。
胸の突起は、これから触れられることを期待するように立ち上がっていた。
紫音くんはその突起に舌を這わせながら、もう片方の突起をぎゅっと摘まんだ。
「っはぁ…」
吐息のような声が漏れてしまう。
「ズボン…っんぅ…脱がさない、のぉ…?」
「もものエッチ」
そう言いながら、紫音くんは胸の愛撫を止めてくれない。
「今日はじっくりする…。最後だから」
『最後だから』
その言葉を何度も自分の中で反芻する。
ずっと前から分かっていたことなのに、どうしてこんなに胸が痛むんだろう。
これまで、たくさんの人と繋がってきた。
ごみのように捨てられても、オモチャのように扱われても、それでも「また新しい人を見つけよう」って思えた。
紫音くんから『最後』だなんて言葉を聞くと、僕の心の中は針でチクチクとつつかれるような痛みを感じた。
その針でつつかれた穴はどんどん大きくなっていくように、ぽっかりと寂しく穴があいていった。
僕はその寂しさに耐えきれず、自分のズボンのベルトを緩め、パンツごと下ろした。
「もも…?」
「お願い…っ!紫音くん…、もう入れて…」
この寂しさを抱えながら、じっくりなんて耐えられない。
いっそ、早く終わらせて欲しい…。
今までの彼氏のように、ごみのように捨てて欲しい。
そうしたら、僕は紫音くんを忘れられるのに…。
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