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第15話 僕、淫魔です!-Ⅴ- -4-

「―~~~……ひぃっ……! ……すけッ…………」 ―ピクン! ピクピク…… 「団長、向こうから男の声が……」 「……シャルか……?」 「いえ。シャルの声ではありませんが、最後の目撃報告から考えると一緒に居る可能性が……」 「そうか。そうだな。……よし、その声の下へ行こう」 まだ夜露が朝露へと変わるほんの僅かな前の時刻、リオと彼の仲間の獣人の傭兵は『男』と思われる微かな声を拾った。 そう、……夜が明けて、朝陽がさす。……そんな一筋の光に似た、男のだみ声。 優秀な部下の耳を頼りに声に近づけば、追跡防止の"におい絶ち"の簡易的な結界が施された小さな小屋が現れた。 ―……粗末で小さな木造の小屋。道具を収納している小屋ともとれる、ありふれた風貌なのに、その小屋はどこか異様な空気を醸し出していた。 「小屋に突入、救助は俺が一人でやる」 「……では、団長、俺は副団長達に"見つけた"と伝えて来ます」 「ああ、頼む」 多少無理のある団長の言葉に、彼の部下は素早くそれを受け入れ、エストの元へ駆けて行った。 実はリオは"オーガ"と"人間"の血が絶妙に混ざり合っている、"人間寄り"の一族出身なのだ。 そんなリオと下手に戦闘時に行動を共にすると、狭い小屋での立ち回りで逆に自分が危険に晒されてしまう事を、獣人の青年は知っていた。 だから、リオに全てを任せる行動をして、青年はエストの元へ駆けたのだった。 そして残されたリオは部下が去ってから、静かに小屋の様子を確かめる為に、壁に耳を近づけてみれば、"ぺちゃぺちゃ"とした水音と"ギシギシ"とした木製の安い軋み音、「ぅ、うう~~」と言った聞き覚えのある捜し人のくぐもった声……と、複数の人物が居そうな気配。 その情報を得た彼は壁から離れ瞳を閉じて深呼吸を数度すると、一気に小屋の扉を蹴破った。 「……シャル!!」 ―バギィンッ!! 「……あ。団長ひゃん! ……じゅるるる~~~ぅ! じゅるん!!」 「ひゃ、はぁっン……!?」 「もぉ、無理……もぉ、無理っ……」 「マジで……天国に連れてかれる……」 「…………」 小屋の異様な雰囲気の原因と、さっき得た情報の中身は"コレ"。 リオは一瞬にして事態を理解して、とにかく受け入れる方向へ脳内シフトを決めた。 一方、シャルは突然現れたリオに驚いて、男のペニスを強く吸い上げてしまった。 吸い上げられた男は変に感じた声を出した後、仰け反った体勢でグッタリとし、瞬間的に"ぐるん"と白目を剥いた。 ―……わ、わ、わ! 団長さんが来てくれたんだ!? 「……相手に大人の男、三人……全員、一晩でここまで枯らさせたのか……」 「……ふぁい。……ンちゅるぅ~~~……」 「その干乾びたペニスを吸うのを止めるんだ、シャル。……出ないだろ?」 「んぅ? ……ちゅぽ。……はぁい、団長……さん」 「"どうやら討伐対象にどこぞに連れて行かれた"と聞いて、必死にここまで来たのに……。 逆にとんだ犠牲者を生んでいたとは……ふぅうううぅうううぅぅぅ~~~~~~~~~」 あれ? 団長さんの溜息が凄く深いよ? しかもちょっと瞳に光が感じられない……。 「シャル……流石に食い過ぎだ!! 全員、虫の息だぞ!!?」 「……だって、僕、腹ペコ淫魔ですよ? 今は、腹ペコ淫魔シスター設定です! 切られた下着の恨みと、淫魔の腹ペコ力、舐めないで下さい!!」 怒鳴りあう僕達の足元から、「ぁう、ぁう……、出ません、出ません……ぁう、ぁう……」「淫魔、こぁい……ママぁ……ママぁ……」「無理です無理です無理です無理です……∞」と呻き、囁くような声が聞こえてきてるけど、まるっと無視!! 「―……何だ、その設定は…。しかしな……」 「やーです! 僕は食い改めません!!」 「……なら、そんな言う事を聞かないシスターには、お仕置き調教か?」 「ンひゃぁ!?」 そう言うと団長さんは僕を軽々と小脇の抱えて尻をナデナデ……。え? これって、"お尻ぺんぺん"? するぞ、って合図? 「ぼ、僕に"お仕置き調教"、するの? "お尻ぺんぺん"? "お尻ぺんぺん"なの?」 「………………………………」  「ん……と、……僕、団長だけに"M"属性ついちゃいそぉ……かな?」 「……シャ、ル~~~?」 「あ。でも、痛いのはやだなぁ……。ん~~~~~~」 「シャル……はぁ……」 すると団長さんは小脇から僕を姫抱っこにかえて、額同士を合わせて、少し掠れた囁き声で話し始めたんだ。 「とにかく、お前が……とりあえず無事な様で良かった。……シャル……」 「……リオ……」 僕は他人の目も有る中で、思わず団長さんを"リオ"と呼んでしまった……。 「……リオ、ごめんね……?」 「シャル……。ああ、シャル……」 泣いてないけど、涙していると感じる団長さ……リオの声に、僕は彼の首に腕をまわして更に抱きついた。 リオに少しでも近く……触れて、何だか……どうにかしたかったんだ。 何を、どうするか……なんて、全く分からないんだけど、近くに行きたかったんだ。 少しの間だと思うけど、僕達はそうしていた。多分、数十秒……。 そして、その空間をリオは僕を"ぎゅ"っとしてから、終わりにしたんだ。 「さて、子猫の冒険もここまでだ」 「……ンにっ?」 からかう様ないつも通りの声でそう言うと、団長さんは僕をその場に降ろして立たせ、上着を掛けてくれて頭をポンポンとしてきた。 「―……シャル、帰るぞ。じきに、エスト達がこいつ等を回収しに来る。……必要なら、最後に何か言ってやれ」 「あ。……うん」 団長さんの言葉に、僕は浅い呼吸を繰り返している三人の手を集めて両手で握ると、全員が怯えが混じる不思議そうな目で僕を見てきた。 僕はそんな彼等に微笑みを作り、シスターとして口を開いた。 「―……貴方がたに、牢獄への扉が開かれました」 ……だって彼等、"討伐対象者"、だからね!! 生け捕りだよ? あはっ! ガシャーン♪

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