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第19話 僕、淫魔です!-Ⅵ- -4-
―……雨宿りから、僕とミカは何とか夕暮れになる前に館に戻ってこれた。
リヤカーごと食材を料理長に渡し、僕とミカはそれぞれ風呂や洗濯……。
そして一通りの事を済ませて僕が料理長の下でロールキャベツの手伝いをしていると、玄関ホールが騒がしく……。
きっと団長さんが帰ってきたんだ!
あ。ちなみにミカは「ここの団長に少し言いたい事があるから」と言って、僕ととりあえず行動を共にしているんだ。
団長さんが帰ってきた様だし、僕は団長さんに会いたい、ミカも用事があるなら、彼の元に行くしかないでしょ!
「団長さん、お帰りなさい! 今日の夕ご飯のポテトサラダと団長さんの好物のロールキャベツ煮、僕も作るの手伝ったんだよ! たくさん食べて!」
「ただいま。そうか、シャル。偉いな……。シャルが手伝ったんなら、ロールキャベツは更に美味そうだな。本当にたくさん貰おうか」
「リ、リオッ……! たくさんね! そしてその後、僕に還元……」
「わーった、わーった」
そう言って、僕の頭を大きな手でグリグリ撫でて……! はぁう! リオ、大好き……!
そんな"「リオ大好き!」きゅんきゅん状態"の気持ちでリオに抱きつこうとしたら、ミカが急に後ろから僕を抱き締めてきた。
えええええー????
「……リオ、俺はお前からシャルを……奪う!!」
「……は、ぁ? ……ってか、ミカ? 何でお前が俺んトコに……」
「シャルが淫魔だろうが、……今は男娼をしてようが、構わない……」
団長さんの言葉を無視して、僕を抱き締めながらミカは一方的に言葉を紡いでいく。
「俺は、気に入った……好きな一つの物をずっと大事にするのが好きだ。この意味が分かるか、シャル?」
「……ぇ、ぇ、えッ? え??」
そう言って、今度は両腕を掴んで向かい合わせにし、不敵な笑みで僕を見てきた。
「シャル、とりあえず待ってろ!」
「へ?」
「約束通り、近い内にまた来る。またな!」
「ぁ、う、うん! またね~」
ミカは僕にも一方的な言葉を向け、颯爽と帰って行った……。
そして残された僕と団長さん……。
団長さんはどこか疲れた様な半眼で、ミカの背中を見送っている様だ……。
「―……団長さん、彼とは……知り合い?」
「……あの小僧は俺の傭兵団が一応所属しているこの国の…………元傭兵集団だが、今は天空騎士団の現団長で、俺のてんて……知り合いの次男坊だ」
「!!!?」
つまり、ミカも天空人!? 翼とか……見たら無かったけど!?
……ぅ、う~~ん……。翼は僕も消せるから、それと同じ原理なのかな?
しかも団長、何か別な単語を言いかけたっぽい……。
「てんくう……きし……、が何で傭兵を……?」
「それはな、天空騎士も元は傭兵集団だ」
「?」
「神の御名に集まった、天使が祖の戦士共が元だ。ま、特殊集団だがな」
む? むむむ?
「……それで、シャル、"約束"ってのはナンだ?」
「んと……ミカが後から、団長さんトコロの傭兵団に入団申請を……」
「は!? 何でだ?」
あ。このリオの食い付き具合は、何だかマズい気がする。
……ミカの蒼玉出世払いの事は、今は黙っておいた方が良い? ……かな?
「……ぁ、あは? あはは? あはー!」
「……シャル? 何か知っているのか?」
「ははは……! 僕、団長さんの食事の用意しますね!」
そして僕はリオの元から、慌てて食堂へと逃げ……―……
「料理長~! 団長のは、ロールキャベツ"超"大盛りで!!!」
「ぉ、おう?」
料理長、頼んだよ!! 好物のロールキャベツでリオを懐柔して!
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