19 / 32

第19話 僕、淫魔です!-Ⅵ- -4-

―……雨宿りから、僕とミカは何とか夕暮れになる前に館に戻ってこれた。 リヤカーごと食材を料理長に渡し、僕とミカはそれぞれ風呂や洗濯……。 そして一通りの事を済ませて僕が料理長の下でロールキャベツの手伝いをしていると、玄関ホールが騒がしく……。 きっと団長さんが帰ってきたんだ! あ。ちなみにミカは「ここの団長に少し言いたい事があるから」と言って、僕ととりあえず行動を共にしているんだ。 団長さんが帰ってきた様だし、僕は団長さんに会いたい、ミカも用事があるなら、彼の元に行くしかないでしょ! 「団長さん、お帰りなさい! 今日の夕ご飯のポテトサラダと団長さんの好物のロールキャベツ煮、僕も作るの手伝ったんだよ! たくさん食べて!」 「ただいま。そうか、シャル。偉いな……。シャルが手伝ったんなら、ロールキャベツは更に美味そうだな。本当にたくさん貰おうか」 「リ、リオッ……! たくさんね! そしてその後、僕に還元……」 「わーった、わーった」 そう言って、僕の頭を大きな手でグリグリ撫でて……! はぁう! リオ、大好き……! そんな"「リオ大好き!」きゅんきゅん状態"の気持ちでリオに抱きつこうとしたら、ミカが急に後ろから僕を抱き締めてきた。 えええええー???? 「……リオ、俺はお前からシャルを……奪う!!」 「……は、ぁ? ……ってか、ミカ? 何でお前が俺んトコに……」 「シャルが淫魔だろうが、……今は男娼をしてようが、構わない……」 団長さんの言葉を無視して、僕を抱き締めながらミカは一方的に言葉を紡いでいく。 「俺は、気に入った……好きな一つの物をずっと大事にするのが好きだ。この意味が分かるか、シャル?」 「……ぇ、ぇ、えッ? え??」 そう言って、今度は両腕を掴んで向かい合わせにし、不敵な笑みで僕を見てきた。 「シャル、とりあえず待ってろ!」 「へ?」 「約束通り、近い内にまた来る。またな!」 「ぁ、う、うん! またね~」 ミカは僕にも一方的な言葉を向け、颯爽と帰って行った……。 そして残された僕と団長さん……。 団長さんはどこか疲れた様な半眼で、ミカの背中を見送っている様だ……。 「―……団長さん、彼とは……知り合い?」 「……あの小僧は俺の傭兵団が一応所属しているこの国の…………元傭兵集団だが、今は天空騎士団の現団長で、俺のてんて……知り合いの次男坊だ」 「!!!?」 つまり、ミカも天空人!? 翼とか……見たら無かったけど!? ……ぅ、う~~ん……。翼は僕も消せるから、それと同じ原理なのかな? しかも団長、何か別な単語を言いかけたっぽい……。 「てんくう……きし……、が何で傭兵を……?」 「それはな、天空騎士も元は傭兵集団だ」 「?」 「神の御名に集まった、天使が祖の戦士共が元だ。ま、特殊集団だがな」 む? むむむ? 「……それで、シャル、"約束"ってのはナンだ?」 「んと……ミカが後から、団長さんトコロの傭兵団に入団申請を……」 「は!? 何でだ?」 あ。このリオの食い付き具合は、何だかマズい気がする。 ……ミカの蒼玉出世払いの事は、今は黙っておいた方が良い? ……かな? 「……ぁ、あは? あはは? あはー!」 「……シャル? 何か知っているのか?」 「ははは……! 僕、団長さんの食事の用意しますね!」 そして僕はリオの元から、慌てて食堂へと逃げ……―…… 「料理長~! 団長のは、ロールキャベツ"超"大盛りで!!!」 「ぉ、おう?」 料理長、頼んだよ!! 好物のロールキャベツでリオを懐柔して!

ともだちにシェアしよう!