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奏斗 2
奏斗はあまり騒ぐようなタイプではなかったが、何故か俺と気が合い、すぐに仲良くなった。
家も割と近く、お互い遊びに行くようにもなった。
奏斗は転校早々人気者になった。
成績は優秀だし、真面目だけど真面目すぎず、適度に砕けた雰囲気で。
奏斗の周りはいつも人でいっぱいだった。
「すげーな、俺あそこまで人気者のヤツ初めて見た。前の学校でもそうだったのか?」
「ううん、前の学校は幼稚園から一緒の子がほとんどだったから、あんなに囲まれたのは初めて」
「ふーん…カナだから前の学校でもそうだったのかなって思ってた」
「こっちに来てからは初めてのことが多いよ。人に囲まれたり、『カナ』って呼ばれたこともない」
俺は奏斗のことを『カナ』と呼んでいた。
奏斗の『奏』という字が印象に残っていて、何故かそう呼びたかった。
理由を聞かれ、「『奏』って字が綺麗で印象に残ったから」と答えると、少し照れたように顔を染め、それから小さい声で「いいよ」と言った。
「前の学校でも『カナ』って呼ぶヤツいなかったの?」
「いないよ。ナオが初めて」
「……そっか」
俺だけが『カナ』と呼んでいる。
そのことが、どこか特別なような感じがしていた。
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