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奏斗 3
「2組の今井さんって柊君のこと好きなんだって」
「えっ真衣ちゃんも好きって聞いたけどー…」
6年生になるとカナのことを好きだという女子がやたらと増えた。
まあ、顔はいいし性格も悪くないしモテるのは当然と言えるのかもしれない。
「カナは?好きな女子いないの?」
「え……いないよ?」
「今の間はなんだー?」
「別に意味はないよ」
「ふ〜ん、そっかー?」
「ニヤニヤしながら言うな」
「いない」と聞いて、俺はどこかでホッとしたような、満足したような気がした。
結局女子たちは誰一人カナに告白することなく、俺たちは小学校を卒業した。
しかし中学に上がると、カナは女子から呼び出しされることが多くなった。
「柊のやつ、またかよー」
「スゲーな」
カナは男子から羨ましがられていた。
人気者で告白されることも多い。
多分、他の奴らが望んでいたことに近い存在だったと思う。
だけど俺は、カナを好きだという女を見て、いつもどこか冷めた気持ちになった。
誰もカナと付き合うことはないのに。
だって、カナに好きなヤツはいないんだから。
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