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奏斗 5

カナは人気者だから周りに人が沢山いるのは当たり前。 分かってる。 分かっているのに、もやもやする。 別にカナが相手をしてくれないとかじゃない。 俺にだって普通にカナ以外の友達はいる。 カナも俺とは一緒にいる。 なのにもやもやする。 特にカナが他のヤツと肩を並べて話しているのを見ると、もやもやは広がる。 どんどん広がって、落ち着かない。 何なんだろ………? 「ナオ、どうしたの」 「…え、何が?」 「さっき怖い顔してたけど」 「え?」 怖い顔? 「気分悪いとか?」 「…大丈夫だよ、何ともないから」 「でも…」 「本当に」 何ともないからー。 俺はどんどんおかしくなった。 カナが女と普通に話をしている時でも、他の男と肩を並べて楽しそうに話をしているのを見ても、体育の着替えでカナが着替えているのをみんなが見ていると思うと、あのもやもやは広がっていった。 もうもやもやじゃなくて、ドロドロ。 真っ黒で、ドロドロしたもの。 イライラする。 普通に笑っているカナにもイライラする。 ある日俺のドロドロとしたものは爆発を起こしそうになった。 休み時間のことだった。 普通に友達と話していると、話が盛り上がったせいか誰かの手がカナに触れた。 一瞬身体が固まった。 するとソイツは今度はカナの肩に自分の腕を かけて。 その瞬間俺は席から立った。 「痛いって、倉橋!」 その声でハッと我にかえった。 見ると、自分の手がソイツの腕を力いっぱい掴んでいた。 ソイツはめちゃくちゃ痛そうにしていて、俺はパッと離した。 「っ!……ごめ…」 俺は今…何をしていた? 「もー…いきなり何すんだよ」 「本当っ…ごめ…」 「倉橋、力強すぎだろー」 「あ……はは」 他のヤツらはびっくりしていたが、すぐに笑って。 でも俺はその時上手く笑えなかった。 怖いと、思った。

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