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誘い
あの後、俺は学校を出た。
奏斗のあの顔を見れたから満足だ。
「あれー?直じゃん」
「…あ?」
「久しぶりー、何してんの?」
声をかけてきた女の顔を見て、誰だったかを思い出すため記憶の中を探す。
多分…前に寝たことのある女だ。
合コンというわけでもなかったが、他のヤツらの知り合いなどを入れて7、8人でカラオケに行ったことがあった。
この女はその内の一人で、誘われてそのままホテルへ行ったんだっけ。
「久しぶり、学校からの帰りだよ。そっちこそ何してんの?」
全く興味は無いが、一応聞いた。
「ユリ?買い物の帰りー」
ユリって名前だったのか。
全然思い出せなかった。
どうでもよすぎて。
っていうか、自分で名前言うのってなんかアホ丸出しだな。
「そっか、じゃ俺帰るから」
『またね』と言おうとすると、
「えー?!帰るの?ゆっくり話そーよ!」
返ってきたその声に溜息が出そうになる。
何をゆっくり話すんだ。
お前に話すこととかねえんだけど。
ユリとかいう女は俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
正直、うざい。
どう断ろうかと考えていると、校門から出てくる奏斗が見えた。
奏斗はこちらを見ていた。
何も考えていないような、無気力な目で。
そしてすぐに反対方向へ帰っていった。
「ねえ、ホテル行かない?直とのエッチ気持ちよかったからまたシたいなー、なーんて」
気が変わった。
「 いいよ、行こっか。 」
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