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消えろ

それを見た瞬間、一気に現実に戻されたような感覚を覚えた。 「んぅ……直?」 身体の熱がすっと抜けていく。 「ねえ、どうしたの?」 女が俺に触ろうとしたが、俺はその手を振り払い、女の中から出て制服を着た。 「…直?」 「萎えたから帰る」 「は…はあ?何言ってんの、帰るって…」 「だから萎えたって言ってんの。耳悪いな」 「なっ…」 「これ、俺の分置いとくから」 そう言って俺はテーブルにお金を置いて部屋を出た。 出て行く時、汚い言葉で罵られたような気がするが俺は全然聞いていなかった。 フロントの人が来た時と同じように俺を見ていて、俺は「制服の時は一回家に帰って着替えてから行こ」なんて考えていた。 家に帰ると誰もいなかった。 そういえば、今日は母さんも父さんも遅くなるって言ってたっけ。 部屋に入って倒れるようにベッドにダイブすると、またあの耳障りな声がした。 『…ナオっ!』 「ッ!」 まただ。 「くそっ!」 またアイツの声が聞こえた。 聞きたくないのに。 女とヤってる時に出てくるなんて。 いつもこうやって掻き乱してくる。 もううんざりだ。気持ち悪くて、苛々する。 出て行けよ。 出て行け。 消えろ。 消えろ、消えろ消えろ消えろ消えろ 「消えろよ!!」 なあ、 お前はいつになったら俺の中から消えるんだ?

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